現代社会において、欠かすことのできないデータの利活用。ITの分野に特化した情報通信サービス業においても、ビッグデータの活用によって新たなステージへの第一歩を踏み出した企業が少なくありません。
今回は、情報通信サービス業に特化してビッグデータの活用事例をご紹介します。情報通信サービス業に従事する企業では、ビッグデータをどのように活用しているのでしょうか。
新しい技術によって加速した情報通信サービス業のビッグデータ活用
情報通信サービス業は、情報の処理やさまざまな情報の提供、またハードウエアやソフトウエアの開発などを手掛けていることから、他の業種に比べ特にデータの存在が必要不可欠な業種であると言えます。クラウド技術に対するニーズの高まりや、AI、IoT、ドローンなどの新しい技術が進歩したことにより、情報通信サービス業の発展とともにビッグデータの活用事例も増加。
ICTの進化によって、今後ますますさまざまなビッグデータが生み出される情報通信サービスの業界。企業のグローバル化や顧客ソリューションの構築など、情報通信サービス業の成長にはビッグデータの活用が欠かせないのは言うまでもありません。
情報通信サービス業のデータ活用事例10選
それでは、実際に情報通信サービス業の企業においてのビッグデータ活用事例を確認していきましょう。
気象データを用いて企業のDXを促進/ウェザーニュース
ネットなどで天気予報の配信を行っているウェザーニュースは、自社の持つ気象のビッグデータを活用した「WxTech(ウェザーテック)」というサービスを開発。このサービスは企業のDXを支援する目的も込められており、ビジネス活用も有効だとされています。
WxTechは、気象情報だけでなく自然現象に基づいた詳細なデータを提供するサービス。あらゆる角度から見たデータが提供されるため、WxTech利用者は気象や自然現象に基づいたビッグデータをビジネスの予測や分析などに活用することができます。
ビッグデータを地図上で可視化/NECネッツエスアイ
ネットワークの構築や通信工事などに従事するNECネッツエスアイは、社内外にあるさまざまなビッグデータを地図の上で可視化できる「Ubisense myWorld」というソフトウエアを開発。モバイル環境での利用が可能な上に直感的な操作で利用できるため、さまざまな業種において活用できるソフトウエアとして注目を集めました。
気象やハザードマップなどのオープンデータはもちろん、自社の既存システム内にあるビッグデータなども地図上にて可視化できるため、フィールド技術者の稼働効率がアップしたり、オフィス側からの迅速な指示が可能になったりとメリットはたくさん。
災害時の早期復旧支援にも活用できることから、さまざまなシーンでも活用が期待されています。
二次流通データを活用して顧客の行動を可視化/メルカリ
フリマアプリの開発・運営などを行うメルカリでは、新品を取り扱う企業が持つ“一次流通データ”と自社が持つ“二次流通データ”を連携させてビッグデータを活用。一次流通企業やメーカーでは、これまで一次流通までしか顧客の購買行動の後追いができませんでした。
一次流通企業やメーカーにとって、メルカリの二次流通データとの連携は、自社商品の中古市場での商品価値を知るきっかけとなります。年間94万トンもの廃棄が生まれると言われる中、二次流通データとの連携はメーカーにとっても「売れ残らない商品」を作るために重要なプロセス。
メルカリにとっては一次流通データと連携することで新たな商品を生み出すヒントにもなるため、双方にとってメリットのあるビッグデータ活用事例だと言えます。
農業支援のためのクラウドサービスを開発/富士通
通信インフラなども手掛ける富士通は、ICTの技術を活かして農業センサーの仕組みを開発。日本酒の原料となる米の調達安定化に向け、生産活動・経営を支援するためのアプリケーションをJAや自治体、大手流通業者などに提供しています。
このアプリケーションでは、栽培が難しいと言われる原料米の栽培に関するノウハウや栽培手法などをクラウドに蓄積し、相互にビッグデータを共有。このICTの導入が農家の支援となったおかげで農業自体が効率化され、結果日本酒ブランドの向上、農家や蔵元の経営改善など好循環が生まれました。
AIによる監視で自殺防止にも貢献/Facebook
SNS上では常に大量の写真や動画、テキストなどのデータがやり取りされます。投稿の傾向などを分析することで株価まで予想できると言われていますが、人間だけの力でその膨大な量のデータを活用することは不可能です。
そこでFacebookでは、AIの機械的な処理を活用してフィルタリングを実施。Facebook内の安全を守るためにも、AIの力がフル活用されています。過去には、一日の画像投稿枚数100億枚の中から、AIによって不適切な画像を摘出することに成功。自殺をほのめかすような投稿に対しても有効であることから、自殺防止の効果も期待できるとされています。
AIでビッグデータを解析してトレンドを予測/PR TIMES
プレスリリースの配信などを行うPR TIMESは、ビッグデータをトレンド予測に活用。AIを使ってビッグデータを解析することで、トレンドの予測やメディア自体を科学的に分析することなどを実現しています。
PR TIMESではプレスリリースのデータだけでなく、Webニュースのデータなども蓄積していることから、企業のPR戦略の企画立案から実証、効果検証まで総合的にサポート。自社の持つビッグデータを、他社のPRに活かすという取り組みを行っています。
膨大な文例のビッグデータの学習により誕生した翻訳エンジン/NTTコミュニケーションズ
NTTコミュニケーションズでは、文例のビッグデータを活用して業界特化型の翻訳エンジンを開発。統計的にビッグデータを学習させることで、外国語を極めて自然な日本語に変換したり、日本語の口語解析を世界最高水準レベルに引き上げたりと、高水準な翻訳エンジンが実現しました。
この自動翻訳プラットフォームはAPIを介して結果が提供されるため、ユーザー企業が使用しているサービスに組み込むことが可能。学習や翻訳に関するチューニングもユーザー自身で行えるため、利便性の高い自動翻訳プラットフォームとして期待を集めました。
自己所有の不動産に広告の価値をプラス/スマートコムラボラトリーズ
ITや広告などの事業を手掛けるスマートコムラボラトリーズは、「JAODAQ(R)」(ジャオダック)」と呼ばれる屋外広告の現物取引市場を展開。マンションや商業ビルなどのオーナーが自己所有の不動産に広告面を設け、その広告面を看板を設置したい人に貸し出すことで新たな利益を生むという仕組みです。
スマホやインターネットが普及したことから、広告もネットが主流となっていますが、スマートコムラボラトリーズでは屋外広告に対する価値をビッグデータを活用して分析。データに基づいた客観的な評価から広告の価格を決定し、適正な価格でのやり取りを実現しています。
自社開発のBIツールで企業のビッグデータ活用を支援/日立ソリューションズ
システム構築やコンサルティングなどを行う日立ソリューションズは、電子マネーの楽天edyに自社のインメモリ型BIツール「QlikView」を提供。2021年6月現在で全国86万ヶ所を超えるお店で利用できる楽天edyは、利用者・利用地点の増加によって増えたデータの管理や分析に対する負荷が大きくのしかかっていました。
そこで、データ管理・分析に関わる負荷を軽減すべく、日立ソリューションズのQlikViewを導入。営業部門、マーケティング部門での導入を進め、業務効率の向上や分析精度の向上などの実績を上げました。
その後、システム部門でもQlikViewを導入。現在は、社内システムがきちんと稼働しているかどうかの監視にも役立てられています。
ビッグデータを活用して統計人口データサービスの提供を開始/KDDI
大手通信キャリアであるKDDIは、通信キャリアならではなビッグデータを活用したサービスを提供。個別で同意を得た個人の位置情報データを誰のものかわからないように加工し、マーケティングに活用できるようにしたサービスです。
「KDDI Location Data」と呼ばれるこのサービスで取得できるのは、過去にさかのぼって調査できる“移動滞在データ”や、1時間後の人口の予測値である“未来予測データ”など計6種類のデータ。過去・現在・未来における人々の動きのデータが取得できるため、さまざまな場面での活用が期待されます。
その他業種のビックデータ活用事例はこちら
■金融業界
【金融業編】他企業はビッグデータをどう活用してる?業種別に見るビッグデータの活用事例10選
■医療業界
【医療編】他企業はビッグデータをどう活用してる?業種別に見るビッグデータの活用事例10選
■製造業
【製造業編】他企業はビッグデータをどう活用してる?業種別に見るビッグデータの活用事例10選
■小売業
【小売業】ビッグデータの活用事例15選!メリットやその方法を解説
まとめ
データサイエンスに注目が集まる中、情報通信サービス業においてもビッグデータの活用は欠かせません。各企業、さまざまな形でビッグデータを活用し、企業を新たな未来へと導いています。
今回ご紹介したビッグデータの活用事例を参考に、自社のビッグデータ活用についても考えてみませんか?