マーケティング担当者にとって身近な「ファネル」という言葉。より効果的なマーケティング施策を打ち出すためには、この「マーケティングファネル」について理解を深めておくことが大切です。
そこで今回は、マーケティングファネルの基本からその活用方法についてを解説。種類の違いについても、図を用いてご紹介していきます。
マーケティングファネルとは
まずは、「マーケティングファネル」という言葉の意味から触れていきましょう。マーケティングファネルとは、消費者が商品を購入するまでのプロセスをフェーズ化して図にしたもののこと。ファネルとはもともと漏斗という意味を持つ言葉ですが、その言葉の通りマーケティングファネルも漏斗のような逆三角形の図形になっています。
ファネルの形でなければならない理由は、認識から商品の購入に至るまでの間に見込み客の脱落が起きるため。ファネルの段階が進むにつれ見込み客が脱落していくことから、下に行けば行くほど面積が狭くなるファネルの形を採用しているのです。
ファネルの種類の違いについて
マーケティングファネルは大きく3つの種類にわけられており、それぞれに図の形態・ファネルの配置も異なります。では、それぞれの違いについて確認していきましょう。
パーチェスファネル
パーチェスファネルは、3種類あるマーケティングファネルの中でも最も一般的なもの。パーチェスファネルの「パーチェス」は英語で購買という意味の単語であり、顧客が商品を認知して購入に至るまでのプロセスを表しています。
パーチェスファネルは、「AIDMAモデル」という消費者行動モデルが関連づけられていることが最大の特徴です。
AIDMAモデルのAIDMAとは、
- Attention=認知
- Interest=興味・関心
- Desire=欲求
- Memory=記憶
- Action=購入
の頭文字を取ったもの。
消費者の行動を示しており、マーケティング施策を実施したことで得られた数字をあてはめれば、それぞれのフェーズへ移行するにあたってどれだけの見込み客が離脱していくのかということの分析が行えます。
インフルエンスファネル
購入までの経緯を図にしたパーチェスファネルに対して、インフルエンスファネルは購入後のフェーズを図にしたもの。パーチェスファネルは逆三角形で表されていましたが、インフルエンスファネルは下に行くほど面積が広くなっており、いわゆる一般的な三角形で表されます。
インフルエンスファネルは、下から「発信」→「紹介」→「継続」とフェーズが進み、一番上の「継続」のフェーズは最も面積が狭くなっています。インフルエンスファネルは、消費者たちがインターネットを使って商品に関する情報を発信するようになったことから生まれたマーケティングファネルです。
これまでは購入がゴールであったため、パーチェスファネルで消費者の行動を把握することができました。しかし、インターネットやSNS上にある口コミ、レビューなどがマーケティングを行う上で欠かせない存在となった今、消費者が商品を購入した後のその先まで見据えることが大切になったのです。
インフルエンスファネルは、顧客に口コミやレビューを書いてもらうための施策が整っているかどうかの検証のために欠かせないマーケティングファネル。現代のマーケティングにおいて、重要な役割を担っています。
ダブルファネル
ダブルファネルは、ダブルという単語が表すとおりパーチェスファネルとインフルエンスファネルを組み合わせたような形をしているマーケティングファネル。消費者の商品購入に至るまでのフェーズから、購入後の発信のフェーズに至るまで幅広く分析を行うことができます。
商品の認知度を高めるための「プロモーションフェーズ」→商品を売り込むための「アクイジションフェーズ」→客単価を高めるための「リテンションフェーズ」→ファンを増やすための「インフルエンスフェーズ」と、ダブルファネルは4つのフェーズが基本となります。
パーチェスファネルやインフルエンスファネルに比べてより広い視野を持って分析が行えるため、大きな効果を得たい場合に活用すべきマーケティングファネルです。
3,000社以上の支援実績を持つデジタルマーケティングカンパニーの株式会社ニュートラルワークスでは、『マーケティングファネルは古い?最新の活用事例を紹介』という記事にて、マーケティングファネルの概要からメリット、種類などを詳しく解説していますのでご参考にしてみてください。
マーケティングファネルの考え方は古いのか?
マーケティングを行う上で大きな役割を果たすマーケティングファネルですが、一部ではマーケティングファネルはすでに古いという考え方もあるようです。なぜ、マーケティングファネルは“古い”と言われるようになったのでしょうか。
その背景に迫ってみましょう。
消費者の価値観や行動の多様化
マーケティングファネルは、直線的な消費者行動に対する分析を得意としています。マーケティングファネル自体が画一的で単純化されたモデルであるため、これだけ多様化した消費者の価値観や行動には対応できないのが現実です。
消費者の価値観や行動が多様化したことにより、消費者の年齢や購入する商品によっては違いが生じてしまうというのも、マーケティングファネルが古いと言われる理由のひとつ。サブスクというビジネスがこれだけ定着した今、モノの購入から“コト”の購入へとシフトしたことにより、マーケティングファネルに当てはめてしまうと逆に正しい結果が得られなくなってしまったのです。
また、マーケティングファネルは、商品の購入や購入後の発信をゴールと設定しているため、一度買った商品をもう一度買うという層を取りこぼしてしまいます。トレンドの購買行動や価値観について見過ごしてしまうことも、マーケティングファネルは“古い”と考えられるようになった要因です。
商品の購入経路の多様化
これまで何かモノを購入するときには、実際に店舗まで足を運ぶというのが基本でした。しかし今は、実店舗まで行かなくてもスマホが一台あれば買い物ができる世の中になったことから、商品を購入するための経路も多様化。
広告に関しても、企業側が発信する広告だけでなく、SNS上での口コミやECサイト内のレビュー、インフルエンサーの投稿など、商品に興味を持つきっかけが多様化しています。このような変化から、従来の広告自体に苦手意識を抱いているケースも少なくなく、今までベーシックとされてきた購入経路から商品を手に入れる消費者は減っているのが事実です。
マーケティングファネルでは、さまざまな購入経路を追って分析を行うことができません。こういった特徴も、マーケティングファネルが古いと言われる理由の一つです。
なぜマーケティングファネルが重要視されるのか
古いという指摘も出ている一方、マーケティングを行う上でマーケティングファネルは今も重要視されているのが事実です。企業が商品やサービスの売り上げを上げようとするとき、重要なのは適切なアプローチを行うこと。消費者が商品に興味を持ち購入に至るまでのそれぞれのフェーズにおいて、的確に関心を集めていかなければなりません。
マーケティングファネルでは、消費者が商品の購入に至るところから購入後のフェーズに至るまで、問題点を一つずつ浮き彫りにできます。マーケティングを基に得られた結果を当てはめることで、より一層消費者に寄り添ったアプローチが可能に。どのフェーズの施策が正しかったのか、反対にどのフェーズの施策が間違っていたのかを可視化するためにも、マーケティングファネルは欠かせない存在であると言えます。
マーケティングファネルを活用する方法
マーケティングファネルを活用するためには、パーチェスファネル・インフルエンスファネル・ダブルファネルそれぞれの特徴を活かして使い分けることが大切です。まずはパーチェスファネルを活用して、商品を認知するところから購入に至るまでのプロセスに問題がないかの確認からはじめます。自社で行ったマーケティングをパーチェスファネルに当てはめることで、見込み客を顧客へと成長させるための施策に抜けがないかを確認できます。また、合わせてどのフェーズに注力すべきかも見返すといいでしょう。
その次に行うのは、インフルエンスファネルを活用して、商品を購入した顧客がファン化しているかどうかの確認。商品の購入まで至ったものの、口コミやレビューなどその後の経過が良くなければ、顧客のファン化にはつながっていきません。口コミやレビューにネガティブなものを発見したら、インフルエンスファネルをもとにどのフェーズに問題があったのかということを検証しておきましょう。
最後に行うのが、ダブルファネルを活用して商品の認知から購入、発信に至るまでがスムーズに流れているかの確認です。パーチェスファネル・インフルエンスファネルでそれぞれのフェーズの問題点には目を向けているかとは思いますが、ダブルファネルを活用することでさらなる自社サービスのさらなる改善に取り組むことができます。パーチェスファネル・インフルエンスファネルをさらに強化することで、商品の認知・購入・発信までのプロセスの整備につながります。
マーケティングファネルの活用事例
マーケティングファネルを活用して、実際に業績にうれしい変化が生じた事例をご紹介しましょう。イギリスに拠点を置くファッションブランド「Charles Tyrwhitt」では、マーケティングファネルを活用し、広告費用対効果(ROAS)の改善に成功しました。
Charles Tyrwhittは、SNSでの広告動画によるキャンペーンの実施を企画していましたが、動画広告の質の確保と社内の知見が見合わず、大きな課題となっていました。そこで、Charles Tyrwhittではそれぞれのフェーズに応じた動画を作成し、ファネルごとに動画の訴求内容を調整。
ターゲットに合わせて動画を変えたことによって広告費用対効果は上昇し、一回の購入にかかるコストの削減にもつながりました。
まとめ
消費者行動の変化に伴い、マーケティングファネルだけを頼ることは難しくなりました。しかし、マーケティングファネルにはマーケティングの本質が凝縮されていることから、今後もマーケティング施策の問題点を見つけるための一つの指標となることは間違いありません。
どんな業種であっても活用できるマーケティングファネル。適切に活用して、自社のマーケティング力の向上につなげていきましょう。