投稿日 2022.07.04

最終更新日 2022.07.04

広告の出稿量を増やすほど発生する「飽和」について考える

広告の出稿量を増やすほど発生する「飽和」について考える

出稿する広告の効果は出稿量と比例しない

企業は一定の予算の中で、各種の媒体に広告費を振り分けます。広告の目的は、言うまでもなく自社の製品やサービスを消費者に知ってもらい、実際に購買活動を促すことです。そのため、広告費をつぎ込めばつぎ込むほど広告効果が高まり成果に結びつくのかといえば、そうではありません。実は出稿する広告の効果は出稿量に比例しているわけではないのです。その理由はそれぞれの広告媒体が持つ特性にあります。ここで、広告に使われる主な媒体とその特徴を整理しておきましょう。広告は次のように大きく「マス広告」「Web広告」「SP広告」の3種類に分類できます。

マス広告

テレビやラジオ、新聞、雑誌の4つをマスコミ4媒体といいます。マスという名のとおり、不特定多数の人に向けて情報を発信する媒体がこの4種類で、そこに掲載される広告全般をマス広告と称します。マス広告の特徴は、全国津々浦々の、非常に多くの人の目に留まるという点で、情報を広く拡散したいという場合に威力を発揮します。一方、製品やサービスの認知度は上がりますが、それが実際に購買活動に結びついたのかどうかという効果測定の点では判定が難しい側面があります。さらに広範囲に情報発信できる分、出稿にかかる費用も高額になります。

Web広告

Web広告とは、Web上の各種メディアに掲載される広告の総称です。インターネットを介することからオンライン広告、デジタル広告、インターネット広告などといわれることもあります。Web広告の特徴は、マス広告と比較して広告効果が測定しやすいこと、購買層のターゲティングにすぐれていること、購買意欲をかき立てやすいこと、マス広告と比べて広告出稿にかかる費用が比較的安く抑えられることなどが挙げられます。

SP広告

消費者の購買意欲を刺激して、実際の購買活動に結びつける販売促進手法をセールスプロモーション(SP)といいます。SP広告は、イベントや展示会なども含めて、マス広告とWeb広告以外のすべての宣伝活動を総称するケースが一般的です。具体的には各種のフリーペーパーや電車・バスなどの交通広告、ダイレクトメール、折込チラシ、屋外広告などがこれにあたります。SP広告の特徴としては、出稿費用が抑えられること、限られたエリアでの費用対効果が測定しやすいこと、繰り返し消費者の目につきやすいことなどがあります。

マス広告やSP広告が主流だった従来の広告戦略と異なり、Web広告などのオンラインメディアが台頭するなかで、それぞれの媒体に掲載される広告の効果にも変化が生じています。いわばターゲットへの広告効果の到達度に差異が生まれてきたといえるでしょう。広告にかかる費用を増やしても一定の水準で規定値に達してしまい、それ以上は購入に結びつかない限界点を広告の「飽和」水準といいます。広告費は多ければ多いほど良いのではなく、効率的に管理して最適な予算配分をはかることが重要なのです。

「飽和」までの出稿量は広告媒体によって異なる

「飽和」までの出稿量は広告媒体によって異なる
どの程度出稿すれば飽和に達してしまうのかという水準は、広告媒体によって異なります。ここではわかりやすくTVCMとWeb広告に媒体を絞って比較してみましょう。TVCMは、従来型の広告手法を代表するマス広告の中でも最大の出稿量を有するテレビ媒体で放送される広告です。一方Web広告は、インターネット利用者の増加に伴い、新たな広告媒体として存在感を増してきた最先端の出稿手法といえます。

ここでTVCMの広告の特性を確認しておきます。TVCMによって生み出される広告のメリットとしては、まず製品やサービスの魅力をわかりやすく繰り返し多くの人に伝えることで、その価値を高めるブランド蓄積効果を見込むことができるという点があげられます。必然的に、消費者が購買活動に移行する確率も高まります。さらにTVCMによって発信されたメッセージはしばらく消費者の心に残り、製品やサービスの再購入への動機付けとなる効果も生まれます。そして最後に広告の波及効果をあげることができます。TVCMで興味を持った消費者はオンラインでも検索をするなど関心が多方面に広がる可能性があります。

一方Web広告は、その種類も性質も多岐にわたります。代表的な手法を確認しておきましょう。

リスティング広告

ユーザーが知りたいキーワードを検索した際に、検索画面に表示される広告です。売りたい製品やサービスをピンポイントに表示させることで、購買意欲の高いユーザーがクリックしてくれる確率が高くなります。

ディスプレイ広告

ユーザーが訪れたサイトの内容に関連した製品やサービスをバナーの形で掲出します。ユーザーが関心を持って自発的に訪れるサイトに掲載するので、クリック率もある程度は高くなります。

リターゲティング広告

一度あるサイトに訪れたユーザーに対して、繰り返し同じ広告を表示させることで購買率の向上をはかります。

SNS広告

TwitterやLINEなどのSNSを媒体に広告を発信する手法です。ターゲットへの訴求力が高く、ブランディングにも効果を発揮します。

TVCMとWeb広告の特性を確認してきましたが、両者の大きな違いは対象とするターゲットのボリュームです。ピラミッドの形を連想すると分かりやすいでしょう。三角形の一番下の、横に長く広がっている層には、TVCMがターゲットとする不特定多数の消費者がひしめきます。そこは商品やサービスを今すぐ必要とするわけではないけれど、その存在は確かに知っているという人の集団です。ピラミッドの一番上はWeb広告がターゲットとする製品やサービスを確実に購入しそうな人の層です。狭いですが成約率はかなり高い見込みとなります。Web広告の中でも、不特定多数にブランディングをはかることのできるSNS広告が一番下、その上にディスプレイ広告やリターゲティング広告が積み上がり、一番上が、数は少なくても購買意欲の高い人をターゲットとするリスティング広告というイメージです。

ここで一つ、明らかとなる点が生まれます。それはピラミッドの下から上に行くにしたがって、広告の「飽和」水準が高まるという事実です。TVCMはすそ野が広いだけに出稿量が多めでも容易に飽和に至りませんが、ピラミッドの一番上は面積が狭くすぐに飽和点に達することになります。このように、飽和までの出稿量は広告媒体によって異なってくるのです。

「飽和」を予測することで適切な広告予算の配分を実現できる

「飽和」を予測することで適切な広告予算の配分を実現できる
広告媒体が多様化し、ますます増加し続けている中で、広告効果の最大化をはかるには、マーケティング施策を適切に推進していく必要があります。さらにそれだけではなく、複雑に絡み合うマーケティング手法を駆使しながらより高度なシナジー効果をはかっていくという視点も大切です。そのためには、従来型の選択肢を用いたアンケート調査や意見聴取といった定量・定性調査では実態を正しく把握することは困難です。

このような現状の中で、今注目を集め始めているのがMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)という分析手法です。MMMとは、マーケティング施策が成果や業績に与える貢献度を、統計学的な手法を用いて分析・可視化する方法をいいます。MMMの特徴の一つに、あるマーケティング施策を実施することによる他のマーケティング施策への影響や成果への影響を数値化できることがあります。この手法を用いれば、たとえば、TVCMとWeb広告それぞれの「飽和」水準を予測したうえで予算配分を最適化したり、双方のマーケティング施策を効率的に組み合わせることで相乗効果をはかったりすることもできるようになるのです。施策の可視化は今後のマーケティング戦略において必須の取り組みとなります。統合的なマーケティングミックスの分析には、MMMのような先進の効果測定方法が確実に必要とされてきます。
 
■mmmについて知りたい方はこちら

【まとめ】マーケティング施策の適正化で、広告媒体の「飽和」水準、正しく見極めを

広告は出稿すればするほど成約に結びつくわけではなく、いくら予算をつぎ込んでもそれ以上は効果が見込めないという「飽和」水準があります。しかもマス広告やWeb広告など媒体によって飽和点が異なるのです。さまざまな媒体が多様化しそれぞれが作用し合う中で、MMMなどの手法を用い、マーケティング施策を効果測定して可視化したうえで、広告媒体の飽和水準などを見極めることは、今後の広告戦略には必須の取り組みとなります。

この記事の監修者