投稿日 2023.05.24

最終更新日 2023.05.24

メタバースで顔を合わせず就労支援ができる、メリットや事例を解説

メタバースで顔を合わせず就労支援ができる、メリットや事例を解説

メタバースの就労支援とは何か?

メタバースとはインターネット上に構築された仮想空間のことで、現実世界と同様に3次元で表現される世界です。アバターと呼ばれる自分の分身を使うことで、ユーザーは空間内を自由に移動したり、他のユーザーと交流することができる点に特徴があります。このようなメタバースの特性を就労支援に活かそうという動きが活発化してきています。
 
メタバースの就労支援とは、デジタル空間上に労働環境を出現させてユーザーの雇用を実現させたり、スキルアップの機会を創設しようとする試みを指します。従来のオフラインの労働市場とは異なり、メタバースではバーチャルなキャラクターが現実の人々と交流し、様々な業務を遂行することが可能になりますので、障がいがあったり引きこもりになっている人たちが直接現地に出向くことなく、他のユーザーとコミュニケーションを取りながら仕事に取り組むことができるようになります。このように、メタバースの就労支援は新たな労働機会を創出し、より包括的な雇用機会をより多くの人に提供するという可能性に満ちたものだと言えます。

メタバースで就労支援するメリットとは

メタバースで就労支援するメリットとは
メタバースで就労支援を行うことには多くのメリットがあります。第一に、メタバースは障がいのある人々にとって、よりアクセスしやすい環境を提供できるという利点があります。具体的には、移動上のメリットです。例えば、障がいがあって車いすを使用している人が決められたオフィスに出勤しようとすれば、バスや電車など数多くの移動手段を利用しなくてはなりません。段差を上ったり混雑をすり抜けたりする通勤スタイルは身体的な疲労だけでなく、精神的なストレスも生じてしまいがちです。メタバースであればこのような通勤手段は不用になり、ネットにアクセスすればすぐに仕事に取り組む環境が立ち上がります。そのため、通勤という物理的な阻害要因によって就労をあきらめていた障がいがある人にも、メタバースは就労の機会を提供することができるようになります。
 
2つ目は、引きこもりなどの社会不安のある人々や対面でのコミュニケーションに不安がある人々にとっても、メタバースはより快適な就労環境を提供することができるという点です。なぜなら、仮想空間ではアバターを使用して他の人とコミュニケーションを取ることができるため、自分の外見や能力について過度に気にすることなく、交流によって生じる心理的負荷を感じる割合も軽減することができるからです。そのため、リアルな場所での対面が苦手な場合でも、メタバース上であれば就労訓練や就労体験を容易に行えるというメリットを享受できるようになります。
 
3つ目は、メタバースであれば自分のペースで就労できるという点です。自分の都合のいい時間に無理のないペースで就労することができるため、急な心身の不調に見舞われたとしても、無理することなく就労を継続することができます。
 
このように、メタバースで就労支援を行えば、現実世界では機会が閉ざされていた障がいを持つ人、社会不安のある人たちにもより広く就労機会が提供できる各種のメリットが得られます。

どのような業界がメタバースで就労支援に取り組んでいるのか

どのような業界がメタバースで就労支援に取り組んでいるのか
就労支援では非対面と移動不要のという特徴を最大限に生かしながら、福祉業界、介護業界、行政などの各分野でメタバースを積極的に導入しています。
 
福祉関係の業界では、就労移行支援事業所や就労継続支援事業所などでメタバースが導入されるようになりました。就労移行支援事業所も就労継続支援事業所も、ともに障がいのある人に対する就労支援を行う施設ですが、就労移行支援事業所が一般企業への就職を前提とした各種のトレーニングを提供する場所であるのに対して、就労継続支援事業所は一般企業への就職が困難な障がいや難病を持つ人に対して就労の場を提供する施設となります。これらの事業所では、利用者に対して就労に関する様々なカウンセリングや就職のためのビジネススキル習得サポート、職場体験など実践的なトレーニング、就職活動に対する各種のサポート、就労定着に向けての支援などを行いますが、これら一連のサポート事項について、メタバースを導入して利用者の身体的、心理的負担の軽減を図っています。
 
介護業界では、就労に関する各種の疑問や悩みの解消、就労後の仕事の継続という視点でメタバースを導入するケースが増えています。介護という仕事柄きつい、厳しいというイメージが先行しがちで、就労希望はあっても不安が先行して飛び込むのに躊躇してしまうという傾向が少なくありません。そのため、介護の仕事を匿名のまま仮想空間で実体験して納得するための一つの方法として、メタバースを利用するケースがあります。また、就労後についても、社員がいつでも気軽に相談できてメンタルケアを保つための環境づくりにメタバースが利用され、社員の離職防止などに一役買っています。
 
また、行政もメタバースを積極的に利用するようになっています。引きこもりに対する支援部署で就労をサポートするための講習会や交流会をメタバースで行うほか、引きこもりや障がい者などを対象とした就職企業説明会なども実施するようになっています。特定の場所に出向いたり、知らない人と対面することなく、就労機会を増やすことができる手段としてメタバースの様々な利用方法が模索されています。

各企業が取り組むメタバースの就労支援の事例とは

各企業が取り組むメタバースの就労支援の事例とは
メタバースの就労支援に対しては、企業も積極的に取り組むようになりました。そのうち、ここでは「NTT」「Vma plus株式会社」の取り組みをご紹介します。

NTT

NTTでは仮想空間への来場者に対して、障がいのある人が接客サービスを行うことができる就労支援を行っています。これは、障がいがあるために外出が困難な障がい者が仮想空間でアバターとして接客を行うもので、自宅にいながら案内業務を担うことができるというものです。福祉ロボットを開発する民間企業とのコラボレーションによって実現した就労支援です。

Vma plus株式会社

Vma plus株式会社は、メタバースでグローバルD2Cを実現するコンテンツ企画・運営を行う民間企業です。同社は障がい者就労支援事業を行う一般社団法人デマンド・アンド・ケアにフロアと協力し、障がい者に就労の機会を提供するメタバース支援を行っています。具体的には、仮想空間内で専属スタッフの支援を受けた障がい者が職業訓練としてブースの装飾や接客、受発注の管理などを行うというものです。

【まとめ】メタバースの就労支援の未来

メタバースを活用した就労支援は、外出が不要であるという点、直接他人と対面しなくてもよい点などで、特に障がいのある人や社会的不安のある人にとって各種のサポートが受けやすいものになっています。今後については、メタバースの技術自体日進月歩で進歩していますので、より高度なグラフィックスやリアルな体験も可能になり、メタバースでの労働環境はさらに拡大することが予想されるでしょう。技術の進歩は職業体験の内容もさらに高度に進化させ、ビジネスマナーやコミュニケーショントレーニング、ジョブトレーニングに関してもより完成度の高い体験に結実する可能性も秘めています。
 
また、バーチャルエコノミーの成長により、メタバースには今以上に様々な産業が参入するようになることで、新たな雇用機会がさらに創出されることも考えられます。そのため、障がいのある人や社会的不安のある人に限らず、就労支援は多くの人に拡大し、場所や時間に縛られない柔軟な働き方を望む人にとって、多様な機会の提供が増えることも予想されます。

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