投稿日 2023.03.09

最終更新日 2023.03.09

【2023年度版】経済産業省が押し進めるDX推進、行政DXはどの程度進んでいるのか事例を踏まえて解説

【2023年度版】経済産業省が押し進めるDX推進、行政DXはどの程度進んでいるのか事例を踏まえて解説

経済産業省がDXを推進する理由

DXとはデジタルトランスフォーメーションを略したもので、ITを積極的に導入することで人々の生活をより豊かにするという概念です。DXの概念は2004年にスウェーデンで提唱されましたが、日本では経済産業所が2018年12月にDX推進ガイドラインを発表したことで広く知られるようになりました。このガイドラインでは、DXはIoTやAIのようなデジタル技術を活用し、今後より高度なデジタル化社会市場になっても、付加価値を生み出せるようにビジネスや組織を変革していくことと定義されています。
 
経済産業省がDXを推進する背景としては、現状よりも将来を見据えた国家戦略が挙げられます。日本は技術的な能力が高いといわれていますが、デジタル技術の進歩は目覚ましく、諸外国でも人材の育成や研究が積極的に進められている状況です。そのため、将来的には日本の企業が後れを取って淘汰される可能性がないとは言えません。
 
デジタル市場は今後大規模な市場になることが確実視されており、日本企業が競争で優位性を確立するためには、大きな改革が必要です。例えば、顧客や社会のニーズをリサーチして、適切な製品やサービス、ビジネスモデルを提供し続けるとともに、組織そのものや業務内容、社風なども時代に合わせて見直さなければなりません。経済産業省がDXを推進するのは、将来における日本企業の生き残りを目指しているというのが大きな理由です。
 
また、現時点で日本は欧米諸国や中国に比べてDXが進展していないという点も理由の一つです。海外では新興企業が最新のAIやIoTを積極的に導入し、成果を上げているケースが少なくありません。しかし、日本は既存のやり方を重視する傾向が強く、業務効率や競争力がなかなか伸びないという問題があります。このまま方針転換をせずにいれば、近い将来大きな経済損失が発生すると予測されているため、これを防ぐためにDXを推進しています。

行政DXはどの程度進んでいるか

行政DXはどの程度進んでいるか
2004年にDXを提唱した教授は、2022年には日本の現状に合わせて、「社会」「公共」「民間」の3つの定義を示しています。この内、公共にあたるものが行政DXで、自治体などでスマートな行政サービスを提供するとともに、その地域の価値を向上させる支援を目指す内容です。
 
では、具体的にどのようにDXを進めれば良いのでしょうか。行政のサービスを円滑にするため、単にデジタル化を進めるだけではDXが進んでいるとは言えません。例えば、戸籍謄本や住民票などの証明書発行において、データの検索や発行をデジタル化しても、申請が紙媒体であったり、書類の確認や会計処理が職員の手作業であったりすれば、効率化が進んだとは言えない状況です。むしろ、新しい機械の導入により、慣れるまでは職員の負担が大きくなるでしょう。
 
従って、行政DXでは自治体の人手不足を解消するとともに、感染症の拡大や自然災害の増加、景気の急激な変動などの予測不可能な変化にも臨機応変に対応できるシステムを整えることが重要です。では、行政DXがどの程度進んでいるかというと、現状ではほとんど進んでいるとは言えません。全国の自治体でDXの着手について調査したところ、約8割が未着手の状況です。これは、国内の民間企業のおよそ半分程度の進行状況ともいえます。
 
行政DXがなかなか進まない理由の一つは、利用者の年齢層の広さです。若い年代であれば、新たな手続きについてもすぐに対応できますが、高齢者が行政サービスを利用する場合、デジタル化した手続きではなかなか理解できません。そのため、高齢者が多い地域では特に、行政DXの導入に苦労しています。また、人材の確保や成熟度の違いも原因として挙げられます。都道府県は人材や委託会社の確保がしやすいのに対し、市区町村になると資金や人材の確保が難しいですし、アナログ作業が定着していることもあり、大胆な改革に消極的です。

行政DXの事例、行政DXの現状の課題

行政DXの事例、行政DXの現状の課題
行政DXの進行はやや遅れ気味とはいえ、既に取り組みを行っているケースもいくつかあります。以下に事例を見ていきましょう。

窓口業務

市区町村では窓口業務の割合が大きいため、DXにより負担を大幅に軽減することが可能です。従来の職員による対応も残しつつ、高齢者や障害のある人でも手続きをしやすくするため、スマホや端末からの手続きを導入し、本人確認も電子証明などで完結させています。また、タブレットなどで書類の記載や押印の負担を減らしたり、AIによる案内で手続きを理解しやすくしたりしています。

情報提供

災害情報のように、情報収集に危険性が伴い、かつスピーディーな情報を確実に届ける必要がある情報提供に関しては、IoT技術が便利です。より安定した通信網の整備に加え、災害情報や防災マップ、避難所マップなどの利用者が必要とする情報をすぐに提供できるように、AIで情報の取捨選択が簡単にできるようなサービスも取り入れられています。
 
これらの行政DXを速やかに進めるためには、行政サービスをどのように提供すれば利用者にとってより便利なものになるのか、利用者目線からの要望が必要です。加えて、自治体のデータを委託業者に提供し、スムーズに導入できるように連携を密にしなければなりません。個人情報を多く扱っている自治体にとっては、セキュリティを徹底させること、高齢者でも利用しやすいシステムを考えること、通常業務を行いながらDXを導入できるように準備を進めていくことなどが大きな課題となるでしょう。

今後の行政DXの行方

今後の行政DXの行方
行政DXは、成熟した行政機関が多くの事例を作っていくことで、都道府県のように未着手の割合が高い行政にも浸透させられるようになる可能性が高いです。実際、条件が整えば対応が可能と考えている機関は多く、順次DXは進められていくでしょう。
 
しかし、受け入れ態勢が整えられるとは言え、実際にDXを進めるためにはいくつかの問題を解決しなければなりません。一つは、DXを推進するための専門知識や技術を持つ人材です。また、行政側でもDXを進める上で委託会社と連携を取ったり、部署内での根回しをしたりする担当者を選ばなければなりません。また、これまで長く続けてきたアナログの業務を大幅に変更することに対し、現場の職員から理解や協力を得ることも必要です。特に長く勤務している職員にとっては、急激に変化するDXの導入はなかなか受け入れがたいでしょう。DXを進める上で、仕事の内容が大幅に変わったり、部署の統廃合が行われたりするため、ある程度反発が生じる可能性は高いです。
 
行政DXを全国的に進めていくためには、自治体が導入しやすいような事例の紹介や、委託会社の紹介、DXの導入のサポートを行う機関の設置なども求められます。また、DX未着手の自治体でも、どのような事例ならばスムーズな導入ができそうなのかを検討したり、従来のやり方からどのように切り替えれば良いのかシミュレーションしたりすることで、いざというときに混乱を最小限に抑えながらDXに着手できるようになるでしょう。自治体ごとのプロジェクトとしてだけでなく、自治体同士で情報共有や協力体制を取るなど、より広い範囲での変革も求められます。

影響の少ない導入方法を探しましょう

企業のDX推進も重要な課題ですが、行政DXの事例からもわかるように、実際に大きな変革をしようと思うと従来の業務の手を止めたり、一時的に従来よりも効率が悪くなったりすることは避けられません。DX推進の成功事例を参考に、内部での混乱や影響を極力抑えられる方法を検討しながら、準備や導入を進めるようにしましょう。

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