AI活用の成功事例15選!抑えるべきポイントや参考にすべき戦略を業種別にチェック
企業のDX推進が進む中、AIをビジネスに活かす事例も増えています。AIはさまざまな分野での活用が期待される、最新技術。日々研究も進められており、今後ますます利用シーンが広がることは言うまでもありません。
今回は、実際にAIを導入している企業の事例をピックアップしてご紹介します。AIが企業にどのようなメリットをもたらしているのか、確認していきましょう。
■AIがビジネスに活用されている背景
まずは、AIが活用されている背景から探っていきましょう。AIにまつわる研究がスタートしたのは、1950年代。近代的な技術のようなイメージのあるAIですが、実は昭和の時代からAIという概念は確立されてきました。
AIがビジネスに活用されはじめた背景には、各業界の人手不足という深刻な問題が隠されています。人手不足を解消したいが、そもそも人材を確保することが難しいという企業は少なくなく、仕事の効率化が図れないというケーズも珍しくありません。
そこで注目されたのが、他でもないAIです。AIを活用すれば、人手がないと稼働できなかったような場面でも、少ない人数で仕事を行うことができるようになります。人間は同じ動作を繰り返す中でミスを起こす可能性をゼロにすることができませんが、AIを活用すれば人為的なミスはゼロに。
反復作業の自動化や異常値の検知、チャットボットによるユーザーからの質問解凍など、AIを活用することでミスを減らしながら人材不足の穴が埋められるというメリットが、ビジネスにおいてAIが活用されている背景だと言えます。第一次・第二次・第三次とこれまで計3回のブームを経て、飛躍的な進歩を遂げ続けてきたAIは、現代のビジネスにとって欠かせない存在となっているのです。
弊社では、過去にAIについての記事をご紹介しています。AIの基本的な部分については、過去の記事をご覧ください。
https://fabeee.co.jp/column/dx/ai/
■【業種別】AI活用の成功事例15選
AIは、ビジネスにおいて大きな力を発揮します。すでにAIを活用し事業を成功へと導いた企業の事例を見ていきましょう。
<メルカリ>AIを活用した出品システム
フリマアプリを運営するメルカリでは、AIを活用した出品システムが話題を集めています。フリマアプリにて商品を売る場合、商品の写真を撮影したり商品にまつわる情報を入力したりと、出品者にかかる負担が少なくありません。
そこでメルカリは、AIの画像認識機能を活用し、商品の写真をアップロードするだけで商品の情報が自動入力される出品システムを開発。出品する商品のジャンルによっては金額まで自動入力されるため、出品完了までがわずか1分ほどで実現します。
AIを活用したこのシステムは、UXの向上に貢献。「売ることを空気にする」という浜田CPOの言葉通り、メルカリの出品システムは企業の成長を促進する存在となっています。
<NETFLIX>キャスティングにAIを活用
コロナ禍において、自粛期間を過ごすための心強い味方となっているNETFLIX。NEFLIXに対して、動画配信を手掛ける企業というイメージを持つ人も少なくありませんが、実は“GAFA(Google・Apple・Facebook・Amazon)”に次ぐ巨大IT企業としての顔も持っています。
NETFLIXの作品は、地上波では放送されないような一足突っ込んだ内容のものも多く、話題作も次々と誕生。各作品のキャストに関しても、注目を集める俳優陣が登場し、その顔ぶれに驚く機会も少なくないことでしょう。
なんとNETFLIXでは、各作品のキャスティングにAIを活用。トレンドの情報や出演者と視聴率の関係、作品のストーリーとそれに対する離脱率の関係など、ビッグデータをAIに学習させ、キャスティングの参考にしています。
オリジナル作品の制作をますます強化しているNETFLIX。これから蓄積されるデータによって、魅力的な作品が生み出されることに期待です。
<Intelligence Design>AIを活用して通行人をカウント
AI関連のベンチャー企業であるIntelligence Design株式会社は、AIプラットフォームの「IDEA」を利用して交通量調査を自動化する「IDEA counter」を開発しました。IDEAの画像認識技術を活用し、一日あたりの通行者数をカウント。緊急事態宣言を受け、人流にどれほどの変化が現れているのかを計測するために、このシステムが活用されています。
Intelligence DesignがIDEA counterを活用して計測したのは、原宿・明治神宮前エリアの通行者数。これまで、通行者数のカウントは交通量調査員によって行われていました。しかし、長時間座りっぱなしの体勢でいなければならなかったり、天候に恵まれない日でも外にい続けなければならなかったりと、交通量調査員には大きな負荷がかかっていたのです。
IDEA counterを活用することで人の力に頼ることなく、長時間稼働させ続けることが可能。交通量調査員にかかる負荷をなくしつつ、ミスもなくすことができるため、AI活用のメリットが大きい事例だと言えます。
<千葉動物公園>AIの活用で来園者へのサービスを向上
千葉動物公園では、日本システムウエア株式会社・インテル株式会社の協力により、AIを活用した経営改善に着手しました。入門ゲートやレストラン、中佐上入口などに設置されたカメラから画像データを収集。
収集したデータはAIによって分析され、レストランのメニュー開発や来園者のステータスに合わせたマーケティングや集客施策の実施、適切な人員配置による施設運営など、さまざまな場面へと活かされます。積極的な集客を行うためはもちろん、よりよいサービスを提供するためにも、AIは欠かせない存在となっているのです。
<グッデイ>目視が必要な仕入れに対してもAIを活用
九州北部を中心にホームセンター事業を展開しているグッデイでは、仕入れの作業にAIを活用しています。多種多様な商品を仕入れ販売しているホームセンターでは、より精度の高い販売数の予測が求められますが、属人的な方法では仕入れの数と販売した数に大きな誤差が生じるケースもあり、商機を逃してしまうことも珍しくありません。
そこでグッデイは、商品の売り上げ数を予測するための学習モデルを作成し、仕入れ業務に活用。結果、98%という高い精度での仕入れ予測が実現し、在庫の平均値も16%マイナスという成績を導き出しました。
また、花など仕入れ担当者の“目”が必要であった仕入れに対してもAIを活用。従来は、仕入れ担当者が直接仕入れ先へ出向き、実際に花の状態を見て選定から買い付けまでを行っていました。しかしこの方法の場合、園芸に精通したスタッフでないと対応できない上にその都度仕入れ先へ訪問しなければならず、効率的ではありません。また、スタッフによって評価にもバラつきが出るなど、課題が多く残されていました。
この業務にAIを導入することで統一された基準が設けられ、園芸に精通していないスタッフでも花の仕入れを行うことができるようになります。現地訪問の必要がなくなり、業務の効率もアップ。
ホームセンターの仕入れ業務につきまとう課題を、AIの力によって解決に導いた成功事例だと言えるのではないでしょうか。
<プラントライフシステムズ>農業にAIを導入し農家の“ワザ”を可視化
農業支援制御システムの開発を手掛けるプラントライフシステムズは、農業にAIを導入。経験や勘がモノを言う農業の世界において、このシステムを活用することで初心者でも安定的に農業が続けられることから、新規参入のハードルを下げるきっかけになると期待されています。
「KIBUN」と呼ばれるこのシステムは、日照時間や雨量のデータに基づく水やりのタイミングと適切な水の量、収穫時期などをスマホを通じて生産者へと指示。長年の経験を積んだ農業経験者がいなくても、KIBUNからの指示に従えば農作業が続けられるような仕組みになっています。
人手不足に悩みながらも、長年の経験が求められる農業において後継者の育成はハードルが高いのが事実。そういった課題を解決する一つの手段として、AIは活用されています。
<ウミトロン>漁師の経験値をデータ化しAIで可視化
昨今、気候変動や漁獲の積み重ねにより、水産資源が減少の一途を辿っています。減少した部分をリカバリするために養殖が行われていますが、まだまだ量が足りていないのが現実です。
そこで立ち上がったのが、JAXAのエンジニアとして経験を積んできたウミトロンの代表取締役である藤原氏。養殖を行う上で重要なポイントとなるのが「餌やり」ですが、ウミトロンはAIの機械学習を活用して、魚の自動判定することに成功しました。「UMITRON FAI」と呼ばれるこのシステムは、画像解析を行いながら魚の食欲を自動判定。IoT技術の活用により誕生した自動餌やり機「UMITRON CELL」と組み合わせることで、離れた場所にいながら魚の養殖ができる環境を生み出しました。
自然界に存在している力を、AIというテクノロジーの活用によって最大限に引き出す。AIだけでも人間だけでもなし得ないことができるのは、AIの持つ力なのではないでしょうか。
<ソラスト>AIで新入社員をフォローし離職率低下に成功
業界関係なく、新入社員の離職率は3年以内で30%にも上るという結果が出ています。長い期間をかけて人材の育成を行いたいと考えている企業にとって、この30%という数字は見過ごせないものなのではないでしょうか。
小売・サービス業を行うソラストでは、新入社員をフォローするためにAIの技術を活用。これまでも新入社員に対しては社内でコミュニケーションシートを使いながら面談が行われていましたが、面談記録の作成に手間がかかることや面談時間の確保など、担当者への負担の大きさが課題となっていました。
ソラストは、新入社員の面談における課題解決のため、株式会社FRONTEOの「KIBIT」というAIを導入。面談の記録を解析し、新入社員への素早いフォローにつなげることに成功しました。
AI導入後に行った新入社員への追加フォローの結果、何もしなかったときと比べて離職率にも有意な差があることも確認され、企業の人事面にもAIが活用できることがわかった事例であると言えます。
<まんだらけ>自動翻訳機能の活用で海外売上高アップ
コレクター向けの商品を数多く取り揃えるまんだらけ。海外にもファンが多く、ECサイトにも海外からのユーザーが着々と増えています。しかし一方で、適切な翻訳ソリューションが見つからず、商品の情報がユーザーにうまく伝わらないという課題を抱えており、追加される商品の数に対して翻訳が追い付かないという状況が続いていました。
そこでまんだらけは、自動翻訳・翻訳支援のAIツールを導入。APIを利用しながら毎日更新される商品情報を送信し、機械翻訳による翻訳結果をサイトに戻すという仕組みを確立したのです。
結果、売上高の海外比率は15%から41%へと上昇。AI活用の効果が、きちんと数字となって現れています。
<あきんどスシロー>AIがお皿の集計を自動化
全国に回転ずし店を展開するあきんどスシローでは、会計時のお皿の集計を自動化するためAIを活用。これまでは利用客が会計ボタンを押した後スタッフによるお皿のカウントが行われていましたが、省人化を進めるにあたりこの作業をAIに任せています。
お皿の集計を自動化するためにカメラを設置し、利用客がレーンから取ったお皿と商品をAIが画像認識してカウント。その後の会計も自動で行われるため、人と人との接触を最低限に減らすことができます。
今後は海外への展開も視野に入れ、AI×レストランの新たな模索が続けられます。
<NEC>画像認識でオートロックを自動開錠
マンションなど、オートロックタイプの鍵の開錠に対しても、AIの技術が活用されています。NECは、画像認識機能による顔認証タイプの開錠システム「Neo Face」を開発。認証精度は99.2%と非常に高く、両手がふさがっているときも手間なく鍵を開けることができます。
近ごろ、カードキーやスマートキーなどが採用されているところも増えていますが、顔認証ならカードやスマホをかざす必要もなし。PCのソフトウエアにもこのNeo Faceの技術が活用されており、顔を近づけるだけでログオンできる上にマスク着用のままでも認証可能とあり、今の時代にマッチしたシステムであることがわかります。
<LINE>AIチャットボットでドラマの登場人物と会話ができる
AIチャットボットの進化により、今までにない体験ができるようになっています。ドラマ番組のLINEアカウント上で、登場人物と会話ができるサービスが展開され、放送業界内においても画期的な取り組みとして注目を集めました。
このサービスは、AIチャットボットによるもの。これまではドラマの放送時間にしかドラマの世界に入りこむことができませんでしたが、LINEを介してドラマの登場人物と会話ができることで、ドラマの放送時間外も視聴者の心を掴むことに成功しています。
<ファンケル>AIによるパーソナル肌診断サービスをスタート
これまで、美容業界ではスタッフによるユーザーへの肌診断が行われてきました。しかし、スタッフの手が直接利用客の肌に触れることから、このコロナ禍においては実施が難しい状況にあり、長らく肌診断サービス自体を中止しているところがほとんどです。
しかし、ユーザーの肌に合う化粧品を提案するためには、肌診断などを行いカウンセリングに時間をかける必要があります。そこで、化粧品やサプリメントなどを取り扱うファンケルでは、AIを活用した非接触の肌診断サービスをスタート。
AIの画像認識機能を活用し、顔の画像データからシミやシワなどの肌状態を分析します。マスクを着用する時間が長くなり、肌荒れに悩む女性が増えている中、非接触の肌診断サービスの需要は高まると考えらえます。
<パーソナルテンプスタッフ>チャットボットを活用し業務の負担を軽減
人材派遣業を行うパーソナルテンプスタッフでは、“サポートチャットボット”を活用し、業務効率・従業員満足度の向上を実現。同社が活用するサポートチャットボットは、社外に向けてではなく社内に向けて導入されており、社員の疑問点解決のために役立てられています。
サポートチャットボット導入前は社内での間違い電話による時間ロスや、派遣社員への対応遅れ、クレームの対応など、課題が多く出ていました。サポートチャット導入後は、社員自身が不明点を解決するまでの時間が従来よりも約95%削減され、業務効率化に直結。結果、従業員満足度も向上し、社内全体の活性化につながりました。
<川崎フロンターレ>RPAロボットによるチケット転売のパトロール
エンタメ業界のみならず、スポーツ業界においてもチケット転売が大きな問題となっています。2019年に施行された「チケット不正転売禁止法」により、チケットの不正転売に対する取り締まりが強化されましたが、この法律が施行されたあともチケットの不正転売はなくなっていません。
サッカークラブを運営する川崎フロンターレは、チケットの不正転売撲滅のために富士通と手を取り、RPAパトロールロボを導入。職員による転売サイトの見回りは負担が大きく、結果いたちごっこ状態になっていましたが、RPAパトロールロボの見回りにより300件の不正転売を5分で一覧化することに成功しました。
RPAパトロールロボの見回りによって収集したデータを基に、チケット転売サイトへ取り消しの依頼を実施。業界全体へのチケット不正転売撲滅啓蒙にもつながり、有意義な対策が行えるようになりました。
■まとめ
AIが人間の仕事を奪うのではないかという不安を抱えるニュースなども散見されますが、AIは人間に代わるものではなく人間が効率良く仕事を行うために活用すべき技術です。必要な場所にAIを活用することで、業務の流れは驚くほど効率化されます。