投稿日 2022.05.17

最終更新日 2022.05.17

Cookieレス時代でも活用可能なMMMという考え方

Cookieレス時代でも活用可能なMMMという考え方

個人情報保護の流れによりCookieが規制されつつある

個人情報を保護する姿勢は鮮明になっており、個人情報保護の取り組みは、より細かい部分まで浸透しつつあります。その一つの分野となるのが、Cookieです。特に海外では、Cookie規制の動きが顕著です。さらに、日本でもCookieの規制が強化されています。こちらでは、2022年4月時点でのCookie規制の動向を取り上げます。

GDPR

Cookie規制の代表例として、GDPRと呼ばれるEUでの法律の施行が挙げられます。GDPRは「General Data Protection Regulation」の頭文字をとった言葉で、日本語では「一般データ保護規則」と訳されます。1995年から実施されているEUデータ保護指令に代わるものとして、2018年5月より施行されました。GDPRの特徴の一つが、IPアドレスや今まで個人情報と認識されていなかったCookieも、個人情報とみなしたことです。Cookieを個人情報としたことで、Cookieを取得して活用する企業は、自らの情報や連絡先、利用目的や第三者提供が行われるかどうかに加え、Cookieの保管期間についてユーザーに明らかにしたうえで、Cookie取得に際し、あらかじめ同意を得る必要が出てきました。

Cookie規制が強化されたことで、企業側の負担も増えています。例えば、大量の個人情報を扱い企業は、中立の立場で個人情報の取り扱いを評価したり助言する「データ保護オフィサー」を置く必要があります。また、個人情報の保管期間についても、目的達成に必要だからと言って、いたずらに保持期間を長くすることは認められていません。GDPRに従わなかった場合の罰則規定も強化されています。GDPRは、EUに子会社や支店、営業所を置いていたり、EUに商品やサービスを提供している企業に加え、EU内から個人情報の処理を依頼される企業も対象になるため、日本企業も例外とならないケースが増えています。各社はGDPRの趣旨を理解したうえで、適切な運用が求められます。

CCPA

米国・カリフォルニア州では、2020年からCCPAの運用を開始しています。CCPAとは「California Consumer Privacy Act」の頭文字で、日本語では「カリフォルニア州消費者プライバシー法」となります。カリフォルニア州では、1972年に州内のすべての人々に保障した「不可侵の権利」の中に、個人情報保護が盛り込まれていますが、昨今のテクノロジーの進化のため、個人情報の取り扱いが急激に増加したことに加え、現状の法律では対応できない事案が増えました。その点をカバーするのに制定されたのが、CCPAです。

CCPAでは、個人情報の中に、個人を直接識別できる氏名や住所、電話番号や社会保障番号などに加え、IPアドレスやメールアドレス、アカウント名やCookieなどの間接情報を含め、条文に記載されていない情報も対象となる可能性を示唆しました。さらに、企業が個人情報を収集したり使用した理由を知る権利や、個人情報を削除するよう要求できる権利を強化しています。CCPAが施行された影響は大きいと予想されます。CCPAは世界に影響を与えるアメリカ、IT産業でリーダー的な役割を果たすカリフォルニアで規定されたからです。世界各国でCCPAを踏襲した取り組みがなされると考えるのは妥当です。

ITP

Cookieに関し、企業の動きも活発です。GAFAの一角をなすApple社では、2017年9月より、ITPといわれる仕組みを導入しています。ITPは「Intelligent Tracking Prevention」の略語です。Apple社が提供するブラウザ「Safari」でのCookieを制限する機能で、先に述べたGDPRの施行に合わせて運用が開始されました。Apple社では、プライバシー機能についての説明の中で「あなた以外の何者にも情報にアクセスさせないようにするパワフルなセキュリティ機能」を約束しており、個人情報保護に取り組む強い姿勢を鮮明にしています。

ITPによりCookieが規制されると、ショッピングサイトで商品をチェックした後に遷移した、まったく関係ないニュースサイトで、同じ商品が広告として掲載されるということがなくなります。個人としては、プライバシーにかかわる情報がサイトをまたいで共有されない安心感がありますが、企業側にとっては個人個人に向けての効果的な広告が難しくなることを意味します。世界的に認知度の高い企業の取り組みで、今後も他社に大きな影響を与えると考えられます。

改正個人情報保護法

日本でも、2022年4月から施行される改正個人情報保護法により、Cookie規制が強化されています。個人情報保護法は、2003年に成立したのち2005年4月より施行されましたが、状況の変化を鑑み、3年ごとに見直されることが明文化されています。2022年4月施行の改正個人情報保護法では、EUでのGDPR、米国カリフォルニア州のCCP、東南アジアや南米での法律改正の流れに沿い、Cookieなど、単体で個人情報とならないものを「個人関連情報」として扱うことが明記されました。改正個人情報保護法では、Cookieは個人情報とされていないため、データの収集時点で本人への同意は必要としませんが、Cookieを他社に提供することで個人情報を特定できてしまうケースでは、本人の同意が必要です。

Cookie規制によりWeb広告が受ける影響

Cookie規制によりWeb広告が受ける影響
Cookie規制を考える際に、Cookieには2つの種類があることを理解しておくと、Cookie規制の影響を知るうえで役立つに違いありません。Cookieには、1st Party Cookieと3rd Party Cookieがあります。1st Party Cookieとは、サイトの運営会社が発行しているCookieで、3rd Party Cookieは、第三者が発行するCookieです。1st Party Cookieは、サイト運営会社が、自社を訪れたユーザーの情報を保存するのに用いますが、3rd Party Cookieは、別サイトから自社サイトに来たといった横断履歴の追跡に利用されます。特に規制が強化されているのは、3rd Party Cookieです。3rd Party Cookieは、自社サイト以外のユーザーの行動を追跡できるため、個人情報を侵害するとの見方が広がっています。

Cookie規制により大きく影響を受けるのは、リターゲティング広告、通称「リタゲ広告」です。リタゲ広告は、サイトへの訪問履歴をもとに、別のサイトに移動した際にも、幾度となく自社広告を掲載する仕組みです。広告を目にする機会が増えることで購買意欲が高まり、新規の顧客にアピールするよりも効果が高いとされています。なお、Apple社のブラウザ・Safariでは、すでにリタゲ広告が制限されます。

Cookie規制は、広告の有効性の指標となるコンバージョン数にも影響を与えます。Cookieが規制されることにより、新規登録者が見込み客になった、見込み客が顧客に変化したなど、顧客のポジションの推移を計測するコンバージョンを正確に把握できない可能性があります。コンバージョンは、各広告媒体や広告の効果測定ツールが3rd Party Cookieや1st Party Cookieを使って数値を把握していることがほとんどです。そのため、3rd Party Cookieが規制対象となると、情報の正確性が担保されないことになり、広告の効果が図りにくくなります。各企業の、今後の広告戦略にも影響を与えるかもしれません。

Cookie規制の流れを受け、Cookieを回避した下記の手法も開発されています。ただし、個人情報保護の観点から、新しい手法への規制も強化されており、今後もその動きは加速するとみられています。

スマートフォンのアプリ

スマートフォンアプリをダウンロードする際に、位置情報や他のアプリとの共有を許可するかどうか、ユーザーが決定します。アプリを提供する企業は、ユーザーに位置情報や行動履歴などの取得を許可してもらい、同意を得たうえで個人情報の使用が可能になります。

ブラウザフィンガープリント

ブラウザフィンガープリントとは、ユーザーがサイトに訪問した際に取得するデバイスとブラウザの情報を活用する方法で、Cookieを使わなくても個人を特定できる手法として注目されています。ただし、ユーザーがデバイスやブラウザを変更すると、個人の特定が難しくなるため、Cookie以上の効果は難しいとされています。また、ブラウザフィンガープリントの規制も強化されているため、永続的に使用できる手法とは言えないようです。

MMMならCookieに関係なく広告が売上などのKGIに与えた影響を推測可能

MMMならCookieに関係なく広告が売上などのKGIに与えた影響を推測可能
個人情報保護の対象にCookieが含まれるようになり、Cookieに依存することなくプロモーションを行う必要が出てきました。Cookieの代替手段として注目されているのが、MMMです。MMMは「Marketing Mix Modeling」の略語で、自社のマーケティング方法を最適化することを意味します。

Cookieは自社のサイトやサーバーにアクセスした情報がメインとなりますが、MMMで扱う情報の柱となるのは、広告媒体の出稿データです。広告媒体の出稿データとは、広告が表示される回数であるインプレッション数(IMPs)や、実際に広告がクリックされた回数であるクリック数(Clicks)に加え、広告を掲載した期間とその間の売上高などの情報です。そのほかに自社の販売実績や競合他社のデータ、マーケティングに影響を及ぼすと考えられる気候や祝日などの外的要因も含めることができます。

MMMでは、社内で得た情報に加え、自社でコントロールできない他社や外部のものなど、様々な方向のデータを活用することで広告への貢献度を図り、企業が目指すべき重要目標達成指数であるKGIに与える影響を把握し、推測しやすくなります。多角的な情報を収集・分析する仕組みの構築が、脱Cookie、MMM成功のポイントといえるでしょう。

 
■mmmについて知りたい方はこちら

【まとめ】Cookie規制とMMM活用

個人情報保護は、日本を含む様々な国や地域の法律や、企業のポリシーに盛り込まれており、Cookie規制が強まっています。特に規制が強化されているのが、3rd Party Cookieと呼ばれる、自社サイト以外が発行する情報です。Cookie規制の強化は今後も進んでいくと考えられるため、Cookieの代替手段を模索していく必要があります。MMMはその代表的な候補とされ、多角的な情報を収集・分析する仕組みの構築により、効果的な広告につなげられます。

この記事の監修者

冨塚 辰

冨塚 辰

プロジェクトマネージャー