化粧品製造業界をはじめ、国内の製造業は多くのDXの余地を残していると言われていますが、一方でどのようにDXを進めれば良いのか分からないという声も少なくありません。
この記事では、そんな化粧品製造業におけるDXの進め方について、DXが進まない理由にも触れながらステップごとに紹介していきます。
化粧品製造業DXとは
化粧品製造業DXとは、その名の通り化粧品メーカーにおけるDXを指します。DXはデジタル活用によって生産性向上や働き方改革を推進する取り組み全般をそう呼びますが、化粧品製造業においては特に製造現場におけるデジタル活用を指すことが一般的です。
化粧品製造は繊細な業務が多く、細かな作業に対応できる人の手が不可欠とも考えられる業界ですが、技術革新が進んだことで、業務を自動化できるソリューションも増えてきました。化粧品製造業DXによって、より短期間で、より多くの顧客に商品を届け、事業を成長に導ける体制作りが必要です。
製造業にDX推進が求められている背景
化粧品製造業をはじめ、日本のメーカー企業は特にDXの必要性が大きいと言われています。その背景としては、以下のような理由が考えられるでしょう。
人材不足の深刻化
製造業DXが必要とされる最大の理由は、人手不足が深刻化していることにあります。少子高齢化の影響で、若手の労働者を獲得することが困難になっているだけでなく、スキルを持った人材も高齢化による引退を余儀なくされ、働き手の量も質も低下する懸念が大きくなっているからです。
DXによって生産性を高め、人手を必要としない生産体制を整備することで、少数精鋭の事業継続と成長ができる環境へアップデートしなければなりません。
既存システムの老朽化
既存システムが老朽化し、相対的に本来期待しているようなパフォーマンスを発揮できなくなってきたり、システム維持のためのコストが増大していることも、DX推進が求められている背景の一つです。
導入当初は優れた生産システムであっても、当時から10年・20年経過したものはすでに時代遅れとなっているケースが多く、抜本的な設備のアップデートを行わないとさらなる業務効率化は期待できません。
また、古くなったシステムは現行のシステムとの互換性がない、あるいはメンテナンスに多額のコストがかかってしまうレガシーシステムとなってしまい、使えば使うほど赤字になるようなケースにも陥ってしまいます。
DX時代に合わせたシステムのアップデートを行い、質と量の追求ができる体制に刷新しなければなりません。
国内既存市場の縮小
円安の影響や人口減少の影響もあり、日本市場は世界市場から見て縮小の一途を辿っています。既存のマーケットが国内市場である場合、新しくターゲティングを行わなければ成長はおろか、事業を維持することも難しくなるでしょう。
DXの実現によって新しいアドバンテージを獲得し、国内の新しい市場を開拓、あるいは海外市場への展開も見据える必要があります。
主なDXソリューション
化粧品製造業におけるDXでは、具体的にどのようなソリューションが活躍しているでしょうか。
高性能ロボットの導入
DXのわかりやすい例としては、高性能ロボットの導入が挙げられます。従来よりもはるかに繊細な作業ができるロボットアームなどを導入することで、手作業が強いられる生産工程も自動化が可能です。
在庫管理システムの導入
原材料や商品在庫を管理できるシステムの導入は、過剰な生産や仕入れを回避すると同時に、供給不足による機会損失を回避する上で重要です。また、期限切れの原材料なども正しく分別し、使用期限を過ぎた材料を使っての生産による品質低下やトラブルを回避することができます。
AIによる生産管理システムの実装
AIやIoTを使った高度なセンシング体制を整備することで、生産ラインをリアルタイムかつ無人で監視し、異常があった際にはすぐに検知してトラブルシューティングができるという仕組みを整備できます。常に監督官が工場を見守っておく必要はなく、一人で複数の生産ラインを監視し、必要な時にだけ現場を確認するような体制を整えられます。
研修教育のIT化
人材育成の効率化と品質向上において、DXが役に立っています。カリキュラムを電子化し、オンラインでいつでも確認できるようにしたり、研修をオンラインで受けられるようにしたりすることで、速やかかつ質の高い教育を提供し、人材の確保を高速化します。
D2Cの実現
販売店を介さず、製造会社が直接商品を消費者に届けるD2Cの実現においても、DXが不可欠です。
自社で販売チャネルをECサイトなどで所有することにより、販売店を経由する時間的コストやマージンコストを廃し、リーズナブルな価格で質の高い化粧品を体験してもらえる機会を増やすことができます。
DXが製造業界で進まない理由
このように、化粧品製造業界も多くのDXの余地と恩恵を残しているわけですが、その必要とは裏腹に遅々としてDXが進まない現実もあります。その理由としては、以下のような背景が挙げられます。
設備投資が高額である
まず、DXを実施するにあたっては多くの設備投資がかかります。特に高性能なロボットアームの導入や、大規模な生産管理システムの導入は、ハード・ソフトともに多額の出資が求められるため、中小企業では気軽に取り組めないのが現状です。
DX人材の確保が難しい
DXを実施するにあたっての人材確保が難しいのも、業界でDXが進まない理由の一つです。DXにはある程度専門知識を持った人物の存在が欠かせない一方、まだまだ日本では十分なDX人材が揃っておらず、各社で争奪戦が続いています。
DX人材の獲得コストも高騰していることから、やはりコスト面の問題でDXを進められない企業は少なくありません。
DXの知見に乏しい
そもそもDXとは何なのか、DXで何が実現するのかという基本的な知見があまり共有されていないのも、DXが進まない理由として挙げられるでしょう。
DXという言葉自体はここ数年で広く共有されるようにはなりましたが、自分ごととしてDXをどう実現するのか、DXはうちに必要なのかというところまでは考えられていないケースが見られます。
化粧品製造業DXの進め方
上記のような課題を解決しながらDXを進めていく上では、以下のステップに則ってデジタル化を実現することが大切です。
DX推進部門を立ち上げる
化粧品製造業に限らず、DXを組織的に実現するためには社内にDX推進に特化した部門を立ち上げ、彼らに主導してもらうことが重要です。
DXはIT関係のタスクと考えられることもあり、企業によっては既存の情シス担当者にその役割をあてる場合もあります。しかしDXは全社的に実施すべき取り組みであり、横断的にソリューションを導入していかなければならないことから、既存の枠組みでは対処が難しい問題を抱えています。
そのため、経営者直下でDX推進部門を立ち上げ、そこが主導してDX施策を進めていくことが望ましいと言えます。
自社のDX課題を把握する
DXを進める上では、まず自社のDX課題を特定することから始めましょう。DXはソリューションばかりに注目が集まるものの、肝心なのは自社でどのような問題に直面しているのかを知ることです。
自社の課題を正しく把握することで、DXの恩恵を最大限受けることができます。この際、俯瞰的に状況を把握するためにも、専門のDXコンサルタントやベンダーの知見を借りることも重要です。
導入と改善を進める
DXソリューションを導入した後も、定期的に効果測定と改善を実行することが、DXの成功には不可欠です。成功を見込んで導入したソリューションが正しく機能しているか、機能していない場合はどんな問題を抱えているのかを検討し改善することで、高いパフォーマンスをもたらします。
自社におけるDX施策の成功点と問題点を洗い出しておくことで、今後別のソリューションを導入する際にはよりスムーズに成果へ繋げることができるでしょう。
まとめ
この記事では、化粧品製造業界においてDXが求められている背景や、具体的なDXソリューション、そしてDXの進め方について解説しました。
DXは喫緊の課題と言われている一方、実施コストの高さやDX人材の不足などの問題により、思うように進められないと感じている企業もあります。まずは自社のDX課題を把握し、できる範囲でデジタル化を進めていくことを目指しましょう。
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