企業がマーケティングを行う上で、今やなくてはならないプロセスとなったのがデータ活用。さまざまなデータを活用して、新たな戦略を練るケースも増えていることでしょう。
オンライン上でのアプローチに対する重要性が高まっている今、広告分野においてもデータが活用されるようになりました。そこで今回は、広告にデータが活用されるようになった背景や、実際の事例などをピックアップしてご紹介します。
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広告にもデータが活用されるようになった背景とは
データ活用は、各企業が抱える人材不足や生産性向上などの課題を克服するために有効な手段であると考えられています。そのため、ビジネス戦略の中にデータ活用をうまく組み込んでいくことは、今や企業の将来を見据える上で当たり前のこととなっているのです。
デジタル技術の進歩やスマホの普及、5Gの商用化など、広告を取り巻く環境がデジタルシフトしたことにより、データ活用の重要度は高まる一方。先行き不透明な世の中において、今まで頼りにしてきた勘や経験が通用しなくなったことから、合理的に意思決定を行う材料としてデータが活用されています。
そしてもう一つ、忘れてはいけないのが新型コロナウイルスによる世の中の変化。感染症の拡大によって、これまで以上にデジタル広告に対する需要が高まっています。広告の効果を最大限に引き出すためには、的確なターゲティングが必要です。コロナ禍以降の人々のニーズや関心を把握するためにも、データ活用は欠かせないものとなっています。
広告にデータを活用した事例15選
では、実際に広告にデータを活用した事例をチェックしていきましょう。
DMPを利用して広告を積極的に配信
DMP(データマネジメントプラットフォーム)は、インターネット上にあるユーザーの属性データや行動履歴データなど、さまざまなデータを一元管理するためのツール。DMPを活用した広告の事例は多く、日本国内でも積極的に活用されています。
化粧品会社の資生堂では、「ワタシプラス」という自社サイト内に集まるデータを活用し、アクセスログに基づいた広告の配信を開始。DMP活用以前のマーケティングと比べクリック率は約5倍、成約率は3倍と確実にその運用効果を表しています。
ビッグデータを活用したレコメンド機能
オンラインショップでは、広告においてビッグデータを活用したレコメンド機能がよく利用されています。ECモール大手の楽天では、オリジナルのツールをリリースしてより細かなデータをもとに広告を運用。
ランキングの頻度を上げたりジャンルを細分化したりして、売上につながる工夫を行っています。マーケティングのPDCAサイクルをより早く回すことにもつながっており、実際に商品の売り上げも増加。オリジナルツールのさらなるグレードアップにも期待がかかっています。
DMPでCM効果の高い番組を絞り込み
オリックス生命保険では、自社サイトへ訪問した人のデータや広告閲覧のデータを一元管理し、データの分析結果をもとに広告を配信。自社のテレビCMの効果が高く表れる番組にターゲットを絞ってCMを放映し、CMの効果がより高くなるような戦略を練っています。
デジタル広告が主流となる今、データから見える事実をもとにテレビCMの見せ方を変えることで、その存在意義に変化をもたらそうとしています。
データを解析・分析して企業と人材のマッチング率を向上
採用サービスにもデータ活用を採用するケースが増えていますが、求人広告に対してもデータ活用は有効であると考えられています。採用活動を行う上で得られるのが、求職者たちのさまざまなデータ。
求職者の職務経歴などはもちろん、その人が応募した企業の情報や合否の結果など、企業とのマッチングに必要なデータを集めることができます。これらのデータは、求職者に対してより的確な求人広告を表示させる上で必要なデータ。より多くのデータを蓄積・収集していくことで、マッチングの精度はより高くなると考えられています。
蓄積したデータを解析し新たな広告の作製へとつなげる
5Gが日本国内でも広く展開されるようになり、動画の広告に力を入れる企業も増えてきました。動画広告専門のアプリが開発されるなど、その存在意義の高さが伺い知れます。
暗号資産を活用した動画広告プラットフォーム「こばんちゃんねる」も、サービス提供開始からわずか3カ月で1,000アカウントを突破しました。このサービスでは、独自の暗号資産である“c0ban”を付与し、新規顧客の来店を促進。
アプリ内に蓄積されるユーザーのデータをもとに、より効果的な広告動画を作製し、訴求力の高い動画をアップし続けています。
ビッグデータから広告の適正価格を導き出す
屋外広告の現物取引市場である「JAODAQ(R)」も、データを活用した広告事例のひとつです。JAODAQ(R)は、オーナーが所有している不動産に広告面を配置し、看板を使ってプロモーションを行いたいという人に貸し出すことで、新たな収益を生み出すという流れを作り出したサービス。
広告の費用はビッグデータを活用して適正な価格になるよう工夫がなされており、不動産のオーナーにとっては新たな収入源が得られるのはもちろん、所有する不動産物件の価値も高めることが可能。過去から現在までの事実に目を向けることができるビッグデータは、屋外広告取引市場の実現にも欠かせない存在となっています。
位置情報から広告効果を計測・可視化
位置情報のデータは、企業がマーケティングを行う上でも非常に重要な存在。広告に関しても位置情報のデータが活用される場面は多く、さまざまなプロモーションに役立てられています。
これまで、OOH広告設置のための調査には、自社で行った調査の結果や公共データなどが活用されていました。しかしこの方法では、正確さはもちろんリアルタイム性にも疑問が残り、本当にその広告がそのエリアで効果を上げるのか“賭け”のような状態になります。
そこで活用されはじめたのが、位置情報データ。位置情報データも合わせて活用することで、実際にどこで誰がその広告を見るのかというよりリアルなニーズを確認することができるのです。多様な知見をもとに広告を展開するためにも、データの活用は欠かせません。
購読履歴データを活用した広告配信
年齢や性別だけでなく、子どもがいるかどうかによっても大きく変わる広告のターゲティング。子どもが生まれたことによって購買に対する基準は大きく変わるとされていることから、子育てに関するビッグデータを活用するケースも見られます。
広告配信プラットフォームのログリーと、子育て情報のマッチングプラットフォームであるコズレは、それぞれのノウハウを生かした新たなサービスを展開。子育て情報などを発信するサイト“コズレ”に登録した会員から得られるデータをもとに、ログリーにて子育て世代の層に向けた動画広告を配信。
広告主のニーズに対してもこれまで以上に応えられる動画が配信できるようになり、広告主が求めている層に対してのリーチが可能となりました。
Tカードのデータからサンプリングのバラまきを防止
実際に消費者にモノを見て・触れてもらって、商品の魅力をアピールできるのがサンプリングの一番のメリット。しかし、その商品のターゲットとなる層への配布やそもそもその商品に対して興味を持たない人への配布など、いわゆるサンプルの“バラまき”はこれまである程度仕方のないことであると考えられていました。
そんなサンプリングの無駄を解消すべく活用されたのが、Tポイントカードユーザーのデータ。さまざまなデータをもとに企業のマーケティングをサポートしているCCCマーケティングでは、Tカードのデータをもとにターゲットを絞ったサンプリングを提案しました。
Tカードの会員約7,000万人のデータをもとに、対象者をセグメントしてサンプリングを実施。サンプリングからその効果の検証までを一貫して実施できるため、さまざまな業界の企業から注目を集めています。
広告素材の効果を予測
どういった広告素材を使用するのかは、その素材に対してどれくらいの効果が期待できるのかによって決まります。広告業界大手の電通では、ソーシャルメディア向けの広告素材に対して、どれくらいの効果が期待できるのかを予測するためのツールを開発しました。
過去に配信された広告のデータとその素材のデータを分析し、ユーザーが動画広告を最後まで見る割合やバナーのクリックに至る割合などを予測。広告の素材を数値化し、配信の結果と紐づけたものをAIに学習させることで、広告配信後の効果の予測精度を高めていきます。
このツールは、Facebook・Instagram・Twitterそれぞれに配信されている静止画・動画の広告効果率の予測に対応。ソーシャルメディアを使った広告が必須となった今、その広告の効果を探るためにもデータが活用されているのです。
テレビデータから効率よくリーチできるCM枠を模索
テレビCMの効果を上げるためには、テレビデータの活用が欠かせません。テレビCMの効率化を図るためには、視聴者の職業や年齢といった属性データが必要となります。CMのターゲットとなる層の接触率が高くなる時間帯や、ターゲット層の含有率の高い時間帯など、テレビデータを活用することによってスポンサーの知りたい情報を可視化できるのです。
テレビデータは全国を俯瞰で見ることができるデータであるため、このデータを活用することでテレビCMの大きな規模での効率化も期待できます。スポンサーにとって価値の高い広告枠を提案するためにも、テレビデータは大きな役割を果たしてくれるのです。
広告枠の価値を訴求するためのデータ活用
これまでもタイムCMのセールスを行う上でデータが活用されていましたが、そもそものデータ量が少なく広告枠の適正な価値での訴求が行えないのが実情でした。
しかし今はデータ量も膨大になり、視聴者の少なさから細かいターゲットまで深掘りできなかった番組や、データ整備がじゅうぶんに行なわれていないローカル局などへのセールスも可能に。データは、適正な価値の訴求はもちろん、セールス力の強化にもつながっていくのです。
ビッグデータから人を基点とした広告配信を可能に
コロナ禍真っ只中の今、人の流れが変わりやすく広告の効果率の予測も難しくなっています。これまでは場所のデータを中心とした広告戦略が一般的でしたが、これからはデータをもとに人を基点とした広告配信が主流となるかもしれません。
デジタルOOHの展開に取り組むLIVE BOARDでは、大手キャリアのビッグデータを活用した新たな広告配信&課金体系を実現。広告の設置場所はもちろん、広告を表示させるタイミングなどもデータに基づいて計算し、設置後の効果率測定まで一貫して行えるサービスの提供を可能にしました。
従来の広告よりもよりターゲットへの訴求力が高い広告として、注目を集めています。
物件データ×過去の反応率からポスティングの無駄を排除
デジタル広告が主流となりつつある今も、根強くポスティングされている紙のチラシ。しかし、“とにかくバラまく”というやり方を取っている企業も多く、チラシのターゲットではない層に対してもチラシを配っているケースは少なくありません。
データの力は、無駄の多いチラシのバラまきに対しても、大きな効果を与えてくれます。モバイル広告自体に限界を感じていたTech Frontierでは、物件データを活用した完全成果報酬型のポスティングシステムを確立。
ポスティングするチラシには、QRコードを設置。ターゲットの行動データも集められるようになっており、PDCAサイクルを回すことで効率が上がる仕組みが取られています。
ビッグデータを活かした選挙の広告戦略
ビッグデータは、アメリカ大統領選挙の広告戦略にも活用されています。選挙に活用されたのは、人の行動に関するデータ。スマホで何をチェックしたか、カードで何を買ったか、Googleでどんなキーワードをもとに何を検索したかなど、個人の細かい行動に関するビッグデータを活用し、より有効的な戦略を練ることに成功しました。
どの候補者へ投票するか決めかねている有権者に対しては、心理分析も行ないながらその結果にもとづいた広告を送付。ビッグデータを活用した選挙戦略は結果的に勝利を招いており、ビッグデータの活用は今後の選挙にも大きな影響を与えると考えられています。
まとめ
広告の効果を効率よく上げるためには、データを活用することが一番の近道。さまざまな事例がある通り、すでにあらゆる企業で広告のためのデータ活用が行われています。
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