物流DXを実施するにあたっては様々なアプローチが検討できますが、対策が進んでいる部分としては倉庫業務のデジタル化が挙げられます。中でもピッキング業務は改善の余地が大きいと考えられており、専用のシステム導入によってDXが大きく進んだ現場も増えてきました。
この記事では、そんなピッキング作業のデジタル化を後押しするDPS(デジタルピッキングシステム)について、主なサービスの概要や導入メリットに触れつつ、DPSと似たサービスであるDAS(デジタルアソートシステム)についても紹介しながら、両者の導入を成功に導くポイントを解説します。
物流DXが重視される背景
そもそも物流DXが広く現場で求められるようになった理由としては、以下のような背景が挙げられます。
人材不足の深刻化
物流業界で長く言われ続け、近年特に深刻化しているのが人材不足です。少子高齢化の影響により、若手人材の確保が難しくなっているのはもちろん、ベテラン労働者も高齢化によって引退を余儀なくされ、現場で活躍できる人手が少なくなっています。
最近では外国人労働者の雇用によって人材不足を補っているものの、海外諸国の経済発展に伴い現在のような人材確保がずっと続けられるとは限りません。かけられる人件費にも限界がある以上、人手を増やさずともパフォーマンスを維持、あるいは高められる仕組みづくりが必要です。
企業間デジタル格差の拡大
また、企業によってデジタル活用の程度に開きが現れ始めているのも、大きな要因の一つです。デジタル活用度合いの差が多少のであれば問題にはなりませんが、デジタル活用度合いの差が大きくなりすぎると、事業者間の協業などに支障をきたす場合があります。
デジタル格差が開き、システムを共有できなくなってしまうと、次第に既存業務を維持することもままならなくなってしまいます。案件を受注できず、仕事が入ってこないからです。
このような事態を回避するためには、先進的な技術を積極的に導入し、デジタル格差を産まないよう自助努力することが求められます。
2024年問題の登場
物流業界において急激にDXの機運が高まっているのは、2024年問題を抱えていることも背景にあります。2024年問題とは、働き方改革法案の施行による長時間労働の大幅な規制が実施されることを指します。
物流業界の現在の生産性は、主にトラックドライバーの慢性的な長時間労働によって賄われている側面が大きく、彼らの就業時間が2024年4月以降、大幅に制限されることになります。
結果、従来のようなペースで荷物を運ぶことができなくなり、輸送時間が大幅に伸びてしまったり、物流網のパフォーマンス低下により市場の活動そのものが停滞したりすることも懸念されています。
DPSとは
このような物流DXの必要性向上に伴い注目を集めているのが、DPSです。DPSとはDigital Picking System(デジタルピッキングシステム)の略称で、主にピッキング業務のデジタル化を後押しするためのシステムです。倉庫内の棚などにデジタルの表示機を設置し、ピッキング業務に必要な情報をそこから担当者が取得することで、ピッキング業務を効率化するのに役立ちます。
主な業務の流れとしては、パソコンでピッキングデータを一元管理し、同時に棚に設置しているデジタル表示機のライトや数量表示などをコントロールします。すると現場のピッキング担当者がその表示を元に商品の取り出しを行い、ランプの表示を消してくれるので、作業が終わるまでこの工程を繰り返します。
従来よりもピッキング作業がより単純化されているので、スピーディにピッキング業務を進められるでしょう。
DASとは
DPSと似たようなシステムとして、DASと呼ばれるものがあります。DASはDigital Assort System(デジタルアソートシステム)の略称で、商品を出荷先に合わせて仕分ける業務を効率化するサービスです。
商品をまとめて倉庫管理していても、実際に注文を受けて配送を行う場合、それらを確実に購入者の手元に届けるためには倉庫から商品を取り出し、正しい配送先に送り届ける作業が発生します。
DASはそんな商品仕分けの業務を効率化し、DPSと同じように表示機を設置して、正しい配送先に商品を仕分けられるようランプで案内を送り、ミスのない業務を実現します。
DPSとDASの違い
DPSとDASはいずれも似たような機能を備えているため、製品によってはDPSとDASを切り替えられるタイプのサービスも存在します。
DPSとDASの使い分けのポイントとしては、摘み取り式のメリットを活かすか、種まき式のメリットを活かすかという点が挙げられます。DPSの場合、商品を所定の位置から摘み取って商品を確保するため摘み取り式と言われており、汎用性が高くどんな倉庫にでも対応しているのが強みです。
一方のDASは出荷先ボックスのように所定の位置に商品を配置していくことから種まき式と呼ばれており、DASとは業務フローが微妙に異なります。DASの仕組みが活きるのは、商品の種類が多かったり、配送先が細分化されていたりして業務が複雑化しやすい場合です。
現場の課題や状況に合わせて、適宜DPSとDASを使い分けることが、物流DXの実現においては重要です。
DPS・DAS導入のメリット
DPSやDASの導入は、現場に多様なメリットをもたらしてくれます。以下はその代表的なメリットの例です。
生産性の向上
DPS・DASの導入は、生産性の向上に直結します。従来のピッキング作業は、商品の検索や伝票の読み取り、さらにリストへのサインの作業など、複数の工程を必要としていました。しかしDPS・DASの導入によって、こういった業務負担をまとめて削減し、迅速なピッキングを実施することができます。
こういった生産性向上の取り組みは、特に取り扱う商品数が増えたり、種類が増えたりした際に恩恵が大きくなる点もポイントです。早期からDPS・DASを導入し、事業のスケールが大きくなった際にも柔軟に対応できるよう備えておくと良いでしょう。
ヒューマンエラーの削減
DPS・DASの導入によって、ヒューマンエラーを少なくすることもできます。作業の工数が増えると、その分ミスのリスクも大きくなるため、業務の品質を維持することが難しくなるものです。
一方でDPS・DASは、似たような商品であっても種類を取り違えたり、数を間違えたりしてしまう心配はありません。リストを読み間違えて誤った出荷が発生するリスクを最小限に抑えられる取り組みです。
人件費の削減
作業工数が少なくなったことで、必要な人手を従来よりも減らすことができます。DPS・DASの導入によって得られた生産性の向上効果で足りない人手をまかなったり、余剰人材を別の業務に割り当てたりといったリソースの有効活用に活躍します。
作業手順の簡素化
業務の属人化やスタッフ間のスキルのギャップを解消できるよう、業務をルール化しやすいのもDPS・DASの強みです。
業務は従来よりも単純化され、簡単にスキルを身につけてもらいやすくなっただけでなく、技術の差が出にくいのですぐにフルパフォーマンスを発揮してもらえるでしょう。
取り扱う物品に合わせてのカスタマイズ効率化
DPS・DASは比較的レイアウトなどを必要に応じてカスタマイズしやすいシステムなので、自社の都合に合わせた最適なシステム導入を進められます。
また、取り扱う商品のカテゴリが変わった場合でもすぐに配置を変更したり、DPSとDASを切り替えて最適な業務環境を整備したりと、多様なアプローチで問題解決に臨めます。
DPS・DAS導入を成功に導くポイント
DPS・DASの導入を成功に導く上では、まず自社で扱う商品に合わせたサービスを導入することで、製品間で強みとしている商材が異なるケースがあるため、自社の都合を踏まえた製品選びを進めましょう。
また、システムの導入にあたってはコストや時間を必要とするので、それらを踏まえてどれくらい費用対効果が期待できるのかも考える必要があります。
小規模な現場で運用する場合、製品によっては導入コストや維持管理コストが効果を上回ってしまう可能性もあり、注意が必要です。
まとめ
この記事では、DPS・DASとはどのようなシステムなのか、その導入メリットや機能特徴について触れながら解説しました。
ピッキング業務は多くの現場でデジタル化の余地が残されており、早期の導入で業務改善を進める必要があります。自社の課題に合わせて最適なサービスを選定し、自社業務の生産性向上に努めましょう。
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