投稿日 2021.11.24

最終更新日 2021.11.24

経済産業省のDX推進指標からDXの進め方を考える


DX推進指標をベースにDXの取り組み方を解説していきたいと思います。
DX推進指標は何なのか、また具体的にどのようなことをしていくべきかなどを説明していきます。

DX推進指標とは何か

DX推進指標は企業がDX取り組み状況を自己診断するためのツールであり、
それを経営者や役員、事業部門、DX部門、IT部門など組織全体で課題を認識し、課題に対してどのような施策をするかなど検討する、気付きを得ることを目的に作られています。この指標をもとにDXを進めることでDX推進が曖昧にならず、課題点を明確にして取り組み状況がわかる様になります。
 

※引用:経済産業省の「『DX推進指標とガイダンス』」
 
DX推進指標は「DX推進のための経営のあり方、仕組みに関する指標」と「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築に関する指標」の二つの大枠があります。「DX推進のための経営のあり方、仕組みに関する指標」はビジョン、経営者のトップコミットメント、仕組み(マインドセット・企業文化・推進サポート体制・人材育成・確保)、事業への落とし込みがあり7個のキークエスチョンで構成されています。
「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築に関する指標」はビジョン実現の基盤としてのITシステムの構築、ガバナンス・体制の2つのキークエスチョンが存在します。
合計9個のキークエスチョンとその中にサブクエスチョンが構成されており、その中で各企業が現状のDX推進の取り組み状況を認識することできます。

ビジョンの策定や経営戦略の枠組み、組織の仕組みのための指標
「DX推進の枠組み」(定性指標)
「DX推進の取組状況」(定量指標)

ITの基盤つくりための指標
「ITシステム構築の枠組み」(定性指標)
「ITシステム構築の取組状況」(定量指標)

DX推進の枠組み

ビジョンの策定、経営トップのコミットメント

DX実現のために社内外でビジョンを共有できているか、またビジョンの実現に向けて、事業を変革するために、経営者のリーダーシップの下、予算や人材、事業のプロセスが明確化され、実施できているかを見る指標です。DX推進のために、デジタル技術を使って顧客視点でどのような価値を生み出すのか、社内でビジョンを明確にして共有する必要があります。既存の業務効率化だけではなく、DXによって何をするか目的・目標を定め方向性をビジョンとしてまとめましょう。
推進指標では、IR資料、中期・長期経営計画、経営会議資料が成熟度判定のエビデンスになります。経営者のトップコミットメントに関しても指標の判断材料です。経営者自らがDX推進についてしっかりとコミットし、リーダーシップを発揮しながら全社的な発信を行うことが大事です。またDX推進では業務改革などにより組織内で大きい抵抗や課題があるときに経営者がDX推進への意思決定や後押しをする必要があります。

マインドセット、企業⽂化(仕組み)

DX推進により新たな価値を創出することは簡単なものではありません。
挑戦することで失敗から学びを得ることが重要で失敗を許容し、そして挑戦を促す仕組み作りをしてスピーディーに繰り返し継続する文化形成を組織で構築することが大切です。
目的を明確して「仮説設定→実行→検証→仮説修正」を繰り返しとそれのプロセスを評価する仕組み作りがDXのカギとなっております。
目的が明確ではなく、しっかりとした評価ができないままDXを進めるとPoC止まりでプロジェクトが頓挫します。

推進・サポート体制(仕組み)

DX推進部署や人員の役割が明確化やDX推進する上で適した権限が付与されているかを見る指標です。DX推進には組織内で部署、人員のそれぞれの役割の明確化や相互の連携、必要な権限が与えられているかが重要となります。部署が縦割りになっており連携などが難しい課題などありますが、DX推進には横の連携が必須となります。理想としては経営者直轄でDX推進する部署を設置し、IT部門と事業部門と連携して全社的な活動として取り組む必要があります。

⼈材育成・確保(仕組み)

DX人材の育成・確保に向けた取組が行われているかを見る指標になります。日本企業の課題でもあるIT人材の確保、枯渇は長年言われています。特にDX人材の育成・確保となると幅広いスキルセットや多様性が求められるため困難を極めます。DX推進に必要となる人物象を明確にして、数値目標を設定し、中長期的に人事戦略を設計して具体的なアクションにつなげる必要があります。優秀な人材を集めるためにこれまでの人事評価や給料体系を再構築することも重要です。

事業への落とし込み

DXを通じた価値創出に向け、ビジネスモデルや業務プロセス、企業文化の改革などを経営者自ら説明し、DX推進を取り組んでいるかを見る指標です。経営者自らが改革の必要性を説明し、事業部門やIT部門、現場での説得や抵抗の抑え込みなど、経営者自らがリーダーシップを取り、何を重視しているかを事業レベルに浸透させることが重要となります。
電子化やRPA(自動化)など業務の効率化だけではなく、業務プロセスそのものが変革されているか、状況の把握が必要です。

ITシステム構築の枠組み

ITシステム構築の指標に関して説明をします。

ビジョン実現の基盤としてのITシステム の構築

DXを通じたビジョンの実現や価値創出に向け、現在のITシステムの見直しが必要であるかを認識し、対応策を講じられているかを見る指標です。データの存在だけでなく、どの組織で、どの粒度のデータがどのように活用されているかをITシステムの要件として把握することも重要です。既存のITシステムから入手できるデータだけではなく、活用していなかったデータ、加工が必要なデータ、社内外のデータを活用することが必要になります。ITシステムの構築・運用面では細分化してサービス化することにより、新しいビジネス、顧客が現れた際に、既存サービスの組合せを用いて新しいビジネスに対応できるようなデリバリースピードが重要です。また単に変化へのレスポンスだけではなく、短期で繰り返すサイクルを構築する必要があります。
社内全体でデータを活用できる仕組み、部門を超えて活用できるシステムを実現することが大切です。

ガバナンス・体制

適切なIT投資ができているか、何を削減してそのための資金・人材を生み出すか重点配分を見る指標です。ITの投資配分についてはコストを使う部門と売上を生み出す部門が異なるため経営者自ら横断的に全体最適化したガバナンスの効いた体制を構築します。ITシステム構築をベンダーに依存せず、自社で役割分断を明確にできる人材が確保と価値共創のパートナーとしてのベンダーを見分けることが重要です。DX推進にて変革を起こすためにはIT投資とビジネス価値が紐づいている必要があります。

まとめ

DX推進指標は企業がDXを進めていく上で状況の把握やアクションプランなど、取り組みを自己診断するためのモノです。DXを取り組むための組織の体制とデジタル活用とデータ活用ができるITシステム基盤・体制がどの程度できているかがわかります。DXがあまり進んでない企業はこの指標を元に状況を把握してみるとよいでしょう。
また弊社(Fabeee株式会社)、では経済産業省の推進指標を元にDXをスコア化するDX
診断ツールを提供しています。これにより現状の課題と対策の提案をいたします。DX推進をより効率的に進められるようになります。ぜひご活用ください。
 
「IT業界でのDXの種類・対応・課題・展望についてはこちらの記事で詳しく解説されています。
あわせてご確認ください。
参考:デジタルトランスフォーメーション(DX)について、IT業界での種類・対応・課題・展望 – ITコラム – 株式会社パラダイムシフト」
 

この記事の監修者

阿部 雅文

阿部 雅文

コンサルタント

北海道大学法学部卒業。新卒でITベンチャー企業入社し、20代で新規事業の事業部長を経験。その後さらなる事業開発の経験を積むために、戦略コンサルティングファームにてスタートアップ企業からエンタープライズ企業のデジタルマーケティングや事業開発におけるコンサルティング業務に従事する。2021年5月にFabeeeにジョイン。DXコンサルタントとして大手メーカーや総合商社などを担当するほか、数多くのクライアントから指名を受け、各社の事業開発を支援中。多忙を極める中でも、丁寧で迅速な対応が顧客から高い評価を得ている。