投稿日 2021.12.24

最終更新日 2021.12.24

DX推進レポート2.1を分かりやすく解説、デジタル産業の構成する企業構造のあり方


経済産業省が2018年に「DXレポート(ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開) 」公表しました。その2年後に中間報告として公表したのが「DXレポート2」になります。そして今回2021年8月31日DXレポート2.1(DXレポート2追補版)を公表しました。今回はDXレポート2.1の中身を解説していきますのでご参考にしていただければと思います。
 
■DXとは何か?を知りたい方はこちら

DXレポート2.1とは

DXレポート2.1とは
経済産業省が2020年12月28日に公表した「DXレポート2」の補足版が「DXレポート2.1」になります。「DXレポート2」では、初期のレポートを出してから2年が経過して現状のDXの取り組み状況、企業のDXに対する危機感や新型コロナの影響により大きくデジタルシフトに対応できた企業とできなかった企業で課題が明確になりました。社会の変化に対応するITシステム・企業変革の重要性を公表しました。そして今回の「DXレポート2.1」ではユーザー企業とベンダー企業の現状と変革に向けたジレンマやデジタル産業の姿と企業変革の方向性、変革に向けた施策の方向性などが記載されています。どのような内容なのか紐解いていきます。

DX推進に弊害となるユーザー企業とベンダー企業の関係性


ユーザー企業とベンダー企業の関係性は依存関係にあり、「低位安定」のスパイラルになっているという認識です。「ユーザー企業はIT投資する際にベンダーを競争させてコスト削減をすることができ、またベンダー企業は受託により受託による低リスクかつ長期安定ビジネスにより収益が見込める」といったように依存した関係(低位安定)により、ユーザー企業はベンダー依存にすることで自社のIT対応能力の向上が見込めない、またITシステムがブラックボックス化してしまいます。ベンダー企業は価格競争により低い利益や多重下請け構造になり売り上げ総量の確保が必要になり、そのため労働量及び生産性が低下、低利益率のため技術開発投資が困難に陥ります。この構造がデジタル競争の敗者となりDX推進の弊害になると警鐘を鳴らしています。ユーザー企業は脱ベンダーまたは伴走してデジタル化に協力してくれるベンダー企業をパートナーにする必要があるでしょう。
 
DX推進に弊害となるユーザー企業とベンダー企業の関係性
出典: DXレポート2.1(DXレポート2追補版)ユーザー企業とベンダー企業の相互依存関係

ユーザー企業とベンダー企業が抱えるジレンマ


デジタル産業の企業に変革できないのは企業が抱えるジレンマがあると明示されています。ユーザー企業には2つのジレンマが存在し、ベンダー企業には3つのジレンマが存在します。どのようなジレンマがあるのか見ていきます。

企業共有のジレンマ

・危機感のジレンマ
利益重視でデジタル産業への変革に対する投資や競争力の危機感や重要性が乏しく、危機感が高まったときには変革するための投資体力がなくなってしまう。
 
・人材育成のジレンマ
IT技術について時代遅れ、時間をかけて学んだとしても、習得したときには価値がなくなってしまいます。すぐに新技術を獲得できる人材は他社に引き抜かれてしまう。

ベンダー企業のジレンマ

・ビジネスのジレンマ
ベンダー企業がユーザー企業にデジタル変革を支援する企業へと変革すると受託型ビジネスと比べて売上規模が縮小します。それにより企業の価値が下がる。
最終的にユーザー企業がデジタル化に成功して内製化することによりベンダー企業自体が不要になってしまう。

デジタル産業と企業の構成


DXレポート2.1によると目指すべきデジタル社会の姿は下記のように記載されます。

・社会課題の解決や新たな価値・体験の提供が迅速になされる
・グローバルで活躍する競争力の高い企業や世界の持続的発展に貢献する企業が生まれる
・資本の大小や中央・地方の別なく価値創出に参画することができる

社会課題の解決で言うとコロナ禍にデジタル化へ迅速に対応した企業が当てはまるのではないでしょうか。日本では守りのDX(業務効率改善)の傾向があり、グローバルで高い競争力という観点では課題があるといえるでしょう。
 

出典: DXレポート2.1(DXレポート2追補版)デジタル産業を構成する企業の姿

 
■守りのDXに関して知りたい方はこちら

デジタル産業と既存産業の違い

既存産業がデジタル産業の領域に達するためには、デジタルケイパビリティ(価値を創出するための事業能力)を活用して他社・顧客とつながる必要があります。
自社だけでデジタルケイパビリティを活用するのではなく外に向けて新たな価値の創出することを求められています。

デジタル産業の姿と企業変革の方向性


既存の企業の構造(多重下請け型、ピラミッド型)でデジタル産業はネットワーク型になっております。既存の企業はユーザー企業とベンダー企業の垣根を取り払いネットワーク型に方向性をシフトする必要があります。


出典: DXレポート2.1(DXレポート2追補版)デジタル産業の構造と企業類型
デジタル産業を構成する企業は、その特色を踏まえて4つに類型化できるとのことです。
どのようなことを示しているのか解説していきたいと思います。
 
1.企業の変革を共に推進するパートナー
新たなビジネス・モデルを顧客とともに形成。
DXの実践により得られた企業変革に必要な知見や技術の共有。
レガシー刷新を含めたDXに向けた変革の支援。

伴走型のコンサルティング事業者
 
2 DXに必要な技術を提供するパートナー
トップノッチ技術者(最先端のIT 技術など、特定ドメインに深い経験・ノウハウ・技術を有する)の供給。
デジタルの方向性、DXの専門家として、技術や外部リソースの組合せの提案。

技術力のある開発会社を指しています
 
3 共通プラットフォームの提供主体
中小企業を含めた業界ごとの協調領域を担う共通プラットフォームのサービス化。
高度なIT 技術(システムの構築技術・構築プロセス)や人材を核にしたサービス化・エコシステム形成。

GoogleやAmazonのようなプラットフォーマーで国内だとLineやメルカリのような企業を指しています。
 
4 新ビジネス・サービスの提供主体
IT の強みを核としつつ、新ビジネス・サービスの提供を通して社会への新たな価値 提供を行う主体。

デジタル化の進んでいるユーザー企業を指しています。

まとめ

DXレポート2.1ではユーザー企業とベンダー企業の現状の構造がDX推進に影響を与えていることを説いているようです。日本特有のピラミッド構造、この仕組みを見直す必要がありそうです。ユーザー企業はこの部分に関しては分かっていたものの自社にリソースが作れないなどの課題から目を背けていたようにも見えます。
この構造が変わるのかは今後も注目していきたいところです。

DXレポート2.1では中間取りまとめなので今後も刷新されます。
デジタル産業指標(仮)の策定、DX成功パターンの策定などがより具体的に明示できるようになるのではないでしょうか。

この記事の監修者

阿部 雅文

阿部 雅文

コンサルタント

北海道大学法学部卒業。新卒でITベンチャー企業入社し、20代で新規事業の事業部長を経験。その後さらなる事業開発の経験を積むために、戦略コンサルティングファームにてスタートアップ企業からエンタープライズ企業のデジタルマーケティングや事業開発におけるコンサルティング業務に従事する。2021年5月にFabeeeにジョイン。DXコンサルタントとして大手メーカーや総合商社などを担当するほか、数多くのクライアントから指名を受け、各社の事業開発を支援中。多忙を極める中でも、丁寧で迅速な対応が顧客から高い評価を得ている。