投稿日 2021.11.16

最終更新日 2021.11.16

DX(デジタル・トランスフォーメーション)の日本企業の現状と課題を解説

DXがなかなか進まないと言われる日本ですが、2018年に経済産業省がDXレポート
を発表し「2025年の崖」というキーワードが話題になりました。
同レポート内では国内でDXが進まない場合、年間最大 12 兆円の経済損失が生じるおそれがあると警音を鳴らしています。現状ではDXが進んでいる企業とあまり進んでない企業と二極化していると言われており、業種・業態にもよって大きく差が出ています。
中にはDXとは何かを理解してない、もしくはDXの定義自体を間違えてしまっている企業もあるようです。なぜDXが進まないのかを様々な視点から見ていきます。
 
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日本企業のDXの現状

2020年12月28日の経済産業省による「DXレポート2」で国内223企業の調査では9割がDX推進ができていない状況でしたが、IPAの2021白書による調査によるとDXに取組んでいる企業の割合は約56%で、半数以上の企業がDXの取り組みをしており、昨年に比べるとDX推進は進んでいます。それに対し米国では79%と8割近くの企業がDXを進めているのが現状で米国など比べると、国内のDX推進状況は遅れていると言わざるを得ません。
日本では、DXの取組みに関しては企業によって格差があり、成果が出ている取り組みとしては業務効率化が中心となっています。また、成果が出ている企業では経営者や役員がDX戦略を明確に描けており、社内全体で取組みが進んでいるのが特徴といえるでしょう。

出典: IPA DX白書2021_第1部_総論(DXへの取組状況)
 

国内のDX取組み状況は、業種によって大きな差があります。情報通信業、金融業、保険業が突出してDXの取組みが進んでいて、製造業・物流業・小売業やサービス業の企業ではDXの取組みがまだまだ進んでないようです。


出典: IPA DX白書2021_第1部_総論(DXへの取組状況)
 

主な課題

DXの取組みが徐々にできている企業がいる中で日本ではまだDXが進まない企業が多いのもの事実です。どの様な課題を抱えているかを見ていきます。

明確な経営戦略が示されていない

DXの目的が明確でなくデジタル技術をどの様にビジネス活用していいか分からずIT部門に丸投げになりデジタル活用で業務効率化や既存のビジネスにAI活用するなど、手段が目的化している傾向があります。
このような企業では経営者がDXに関する理解が乏しく、明確なビジョン・戦略が描けていないためうまくDXを推進できていないのが現状です。
DXを通じて新規ビジネスの創出、個客起点の価値創出、ビジネスモデルの変革をするためには明確な戦略が不可欠です。経営者がDXに関する理解を深め、組織全体にDX推進の戦略・ビジョンを明示して従業員にDXの必要性を理解させる事が大事です。

大きな足かせになっているレガシーシステム

DXの大きな課題としてあがってくるのが企業のレガシーシステムです。
多くの企業は既存のビジネスに合わせて基幹システムを導入・カスタマイズを行なっており、組織全体でのカスタマイズではなく、部門・部署毎に合わせたシステムの最適化を行なっているため複雑化している現状があります。そのため企業全体での情報・データ管理の連携がとりづらく有益なデータを最大限活用できない課題があります。
システム自体も長年のカスタマイズにより内部構造が肥大化、複雑化しており機能全体を把握しにくいなどの問題があります。
 
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既存システムの運用・保守の費用問題

企業のシステム投資に関しても問題があります。
経済産業省の「DXレポート」で、企業のIT関連予算の9割が保守・運用費に割いていると公表されました。この中でレガシーシステムの運用・保守に予算が掛かってしまい新しいIT投資が難しくなっているという指摘がありました。現状のシステムで業務支障がないように見えるため、この問題は先送りされてしまいシステムの刷新に踏み切れない企業が多いようです。また刷新するにしても予算も膨大に掛かる上に、この問題を経営者が理解出来ず、現状のシステムのまま運用を続けてしまっています。

DXを推進できるIT人材がいない

国内の事業会社の大半が社内にエンジニアを確保せず、外部のSIer(システムインテグレーター)に依存しているため、社内にIT人材が少ないのが現状です。外部に丸投げしているため社内にノウハウが蓄積しにくい体制なります。
社内でDXを推進できるIT人材を採用、育成する体制を整える必要があります。
 
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ビジネスつなげられない

Iot、AI導入などでPoc(概念実証)を繰り返すも、Pocで止まりビジネスにつながらないことが多々起こります。明確な目的や指標がなく検証だけを繰り返し、結果を判断できずビジネスに転用できないケースが増えることで、DX推進は失敗するという印象を経営者が持つようになってしまっています。

DX推進予算を捻出できない

DXはすぐに効果が出るものではありません。また、失敗する場合もあります。
デジタル投資だけではなくDX人材の確保・育成など、本格的にDX推進するには企業規模やビジネスの内容によっても異なりますが大きな予算が必要になります。DXを成功させるためには、短期的な費用対効果だけに目を向けるのではなく、中長期的な戦略と予算を持ってDXを推進することが大切です。

日本企業のDXの特徴

日本企業のDXには特徴があります。業務効率化、コスト削減、業務プロセスのIT化、リスク回避など「守りのDX」を実施している企業が多い傾向です。
「守りのDX」では、部門単位・業務単位での業務プロセス変革や体制の変革など取り組みやすく成果も出しやすいが特徴です。
一方、米国など海外では「攻めのDX」に取り組んでいる傾向があります。
「攻めのDX」は既存の商品・サービスの高度化や提供価値向上、顧客接点の抜本的改革やビジネスモデルの変革などで新しいビジネスモデルを生み出そうとするような場合は守りDXと比べ難易度も高く、費用が掛かる傾向があります。守りのDXだけではグローバルでは勝てないと言われており、それこそが「2025年の崖」という言葉の本質的な意味です。
 
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まとめ

2018年に経済産業省がDXレポートを発表したのち、日本企業のDX推進が徐々に進んでいることは分かります。ただし、日本のDXは「守りのDX」によっている傾向があり、進んでいる企業と進んでいない企業で二極化しているのが現状です。課題としては適切なIT投資、レガシーシステムのリプレイス、経営者のDXに対して認識不足や明確なビジョン・経営戦略がないことやDX人材の不足などが挙げられ、いまだに多くの企業が解決にできずにいるのが現状です。これらの企業では経営者のDX推進に対する認識や危機感が低い一方で、DX推進が実現できている企業では経営者がビジョンや経営戦略が明確に示し、会社全体でDX推進に向けた動きが取られているなど、国内でもDX推進の格差が拡がりつつあります。今後はDXに成功した企業が強力なゲームチェンジャーとなり、短期間で従来の市場を席巻していくことが予想されています。DXは大企業のみの課題ではなく、日本にある全企業の課題であることを認識して、一刻も早く対応を開始することが大切と言えるでしょう。
 
DXについての手がかりは、弊社(株式会社Fabeee)のホワイトペーパーでも解説しています。DXとはという基本のところから「FabeeeDX」についてまで解説しているので、ヒントを得たいという人は、ぜひダウンロードして確認してみてください。

この記事の監修者

阿部 雅文

阿部 雅文

コンサルタント

北海道大学法学部卒業。新卒でITベンチャー企業入社し、20代で新規事業の事業部長を経験。その後さらなる事業開発の経験を積むために、戦略コンサルティングファームにてスタートアップ企業からエンタープライズ企業のデジタルマーケティングや事業開発におけるコンサルティング業務に従事する。2021年5月にFabeeeにジョイン。DXコンサルタントとして大手メーカーや総合商社などを担当するほか、数多くのクライアントから指名を受け、各社の事業開発を支援中。多忙を極める中でも、丁寧で迅速な対応が顧客から高い評価を得ている。