投稿日 2023.03.03

最終更新日 2023.03.03

メタバースとAIの融合で何ができるのか、ゲーム主体のメタバースに起こる変化

メタバースとAIの融合で何ができるのか、ゲーム主体のメタバースに起こる変化

メタバースとAIの融合とは

メタバースでは人間がアバターを作成して仮想空間にログインしてその空間にいる人とコミュニケーションを取ったり、お買い物を楽しんだり、実生活と同じような過ごし方をします。アバターは操作する人間の意思を持って行動をするので、メタバースとAIはあまり関わりのないものと思うかもしれません。しかし実際のところ、メタバースとAIはとても相性の良いものとして、これらを組み合わせる取り組みが進んでいます。

メタバース空間にAI技術を活用すれば、より人間がメタバース空間で快適に過ごせるようになることが期待されています。私たちの実生活の中にもAI技術が使われる場面が増えています。しかしAIはあくまで機械なので、プログラムされていないことには対処できません。そのため、AIは人間を相手にする場面では相手の表情や身振り、声色などを読み取れず、人間の言動の意図を読み取れないことも少なくありません。それに対してメタバース空間ならアバターがどのような行動を起こしたのか、どの人と会話したのか、履歴がログとして残ります。もちろんアバターを操作するのは人間なので、完全にアバターの行動を理解するのは難しいかもしれません。しかし、大量の情報を処理することに長けているAIは、行動履歴などから即座にアバターが求めている情報を提供できます。

AIを活用してできる事

AIを活用してできる事
それでは、メタバース空間にAIを活用すればどんなことができるようになるのでしょうか。実際のメタバース空間におけるAI技術の活用例やメタバース×AIに期待されていることについて紹介していきます。

リアルなアバターを作れるようになる

従来のメタバース空間におけるアバターは、様々なパーツを組み合わせて自分の理想に近づけたものです。そのため、自分とは別人を作れるのは魅力的ですが、自分に似たアバターを作りたい場合どうしても限界が出てきてしまいます。そしてできるだけ自分に似せたアバターを作りたい場面では3Dデザインなどの必要が出てきます。そこで機械学習の1つである敵対的生成ネットワークという技術を用いることで、デザインのスキルが無い人でも自分に似たアバターの生成が可能となります。この技術が広まることで、幅広い人が自分に似たアバターをメタバース空間上に生成し、メタバース空間上にもう1人の自分がいるような気分を手軽に味わえるようになるでしょう。

AIと自然な会話ができるようになる

AIとの会話には限界があるでしょう。しかし、AI技術の1つである自然言語処理を用いることで、アバターがより機械的な対応ではなく、より人間らしい会話ができるようになることが期待されています。そのため、メタバース空間上で中身が人間ではなくAIの友達や恋人を作る人も出てくるかもしれません。人とのコミュニケーションに苦手意識を持っていたり、引きこもりで人との関わりが無くなってしまっているなど、人と深い関係を築くことに恐怖心を抱いている人も少なくありません。そこで相手がAIなら自分の言動に合わせて対応してくれるので、現実で人と関わるリハビリにもなるでしょう。

メタバース空間での体験がよりリアルになる

従来のメタバース空間では五感の中でも視覚と聴覚しか使いませんでした。そこで現代では残りの3つにあたる触覚・味覚・嗅覚もメタバース空間で再現する研究が行われています。実際に視覚情報から味覚を錯覚させる技術も登場しておりメタバース空間で食べたものを現実でも食べた気分になれる日もそう遠くはないでしょう。

メタバースに起こる変化

メタバースに起こる変化
メタバース空間にAI技術が持ち込まれることによって、どんな変化が起こるのでしょうか。まず期待されているのがメタバース空間での経済活動です。世界中でコロナ禍をきっかけにリモートワークが積極的に取り入れられるようになりました。その一環として、メタバースオフィスと言って、メタバース空間上にオフィスを作り、社員同士が実際にオフィスにいるような感覚で仕事ができる環境づくりに取り組んでいる企業も登場しています。ただ、このメタバースオフィスはあくまで社員の交流を目的としている面が強いです。

そこでメタバースとAIを組み合わせて経済活動を行おうとする動きが出始めています。例を挙げると、メタバース空間上にあるショップで人間の声に反応し、音声認識技術を用いてその声に反応するAIアバターが挙げられるでしょう。人が働くとなると人件費や交通費が発生します。それに対してメタバース空間上なら当然交通費は発生しませんし、顧客対応を行うのもAIアバターなので当然24時間365日稼働させたとしても人件費も一切かかりません。

また、製造業界ではAI技術や3Dのモデリング技術を用いて、メタバース上で製造物のモデリングを行う取り組みをする企業も出てきています。製造業においては二次元・三次元両方の図面を用いて作業を行いますが、三次元のモデルでもパソコンの画面からモデルを見ただけでは、いまいちイメージしにくい部分もあるでしょう。そこでメタバース空間において三次元のモデルをAR技術などを用いて自分の目線で見て認識することで、作業がよりスムーズに進むことが期待されています。

今後のメタバースはゲーム主体から脱却はできるのか

今後のメタバースはゲーム主体から脱却はできるのか
これまでメタバースとAI技術を組み合わせるメリットなどについて解説してきましたが、メタバース自体は「ゲームの世界のもの」という認識が強く、ゲーム以外の分野では普及が進んでいないのが現状です。実際にスマートフォンの普及率は70%近いと言われていますが、それに対して家庭用VR機器の普及率はその10分の1にあたる7%程度に留まっています。メタバースの知名度が向上しても、社会に浸透するのはなかなか厳しいのが現状です。それでは、メタバースの普及が進まない理由について解説します。

開発や導入にコストがかかる

メタバース関連の開発にはARやVR開発の専門的な知識が必要です。しかしこの分野の開発ができるエンジニアの数は不足しているのが現状。それ故にエンジニアを集めるには高い人件費が必要であり、開発にあたっても開発に必要な機器を揃えるなど環境も整えなければいけません。このようにメタバース関連の開発には莫大なコストがかかります。

しかも普及の面でも、家庭用VR機器は高価であり、余程メタバースなどに高い興味を持っていないと購入には踏み切れないでしょう。これがメタバースの認知度と普及率の差の原因として大きいと言えます。メタバースの普及やユーザーの獲得のために無料でアプリを開発している企業もありますが、そもそもVR機器が手元にないとサービスを利用できないのでどうしようもありません。したがって、メタバースの普及にあたっては世の中の人達の手元にVR機器が届くように、VR機器の低価格化が必要と考えられます。

ルールの整備が進んでいない

ルールの整備が進んでいない
メタバース空間における法整備は進んでいません。メタバースは世界中の人と実世界にいるような感覚でコミュニケーションを取れるのが魅力的ではありますが、それと同時に価値観の違いなどから紛争の原因になる可能性もあります。そこでメタバース空間上でトラブルが発生したい場合、どんなルールを適用するのか、どの国の法律を適用するのか、はっきりとした規約を決めたうえで運用しなければいけません。ゲーム空間ではゲームの運営会社がルールを決め、利用者がそのルールに従うことになります。しかしメタバースが広まり、経済活動などに利用されるようになると、誰がルールを決めるのかという問題も出てくるでしょう。メタバースを社会に定着させるためには国単位でのルールの整備も必要です。

【まとめ】メタバース×AIでより便利な社会に!

メタバース空間とAIを組み合わせれば、これまで現実世界で不便に感じていたことが手軽にできたり、メタバース空間上で経済活動が可能になったりすることが期待できます。しかしメタバースを社会活動に応用するにはまだ課題があるのが現状です。とは言ってもメタバースが社会活動に応用されればより働きやすい社会になるという大きなメリットもあるので、AI技術のメタバースへの応用や社会進出の動向には注目したいところです。

この記事の監修者