なぜ日本企業がメタバースに参入するのか?
日本企業にとってのメタバースとは
メタバース(metaverse)は、2つの用語を組み合わせた「メタ」と「ユニバース(後ろのバース)」から作られた造語です。主に、インターネットの中で3次元的な仮想空間を作り出し、アバターを介してさまざまな情報をやり取りします。実はこのメタバースは、まだ発展途上の技術であり、一般の方にとってはイメージが難しく、ゲームでのやり取りを想像することも珍しくありません。しかし、未来においては、ゲーム内で人がコミュニケーションをとるための方法ではありません。もっと先を見越した最先端技術の欠片として、過渡期にある技術です。日本ではアニメ作品の『サマー・ウォーズ』や海外映画の『マトリックス』などの映像が、メタバースの世界観を想像しやすいでしょう。
すでに日本では、商業向けとして2021年に本格的なメタバースのバーチャル空間がインターネットの3次元上に構築されており、多数の企業が参入を開始しています。将来的に、メタバース技術が進展することによって、現実空間で生活しながら、ショッピングや海外旅行、行政サービス(納税・書類発行)の提供、会社に出勤しないリアルな会議(バーチャルオフィス)、普段の遊び・ゲームまで仮想空間を通じてさまざまなことを実現することが期待されています。
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メタバースとVR技術の違い
一般的に、メタバースとの関連技術にVRがあります。VR(Virtual Reality)は、仮想現実と訳される用語で、インターネットの仮想空間を利用して現実に限りなく近いバーチャル体験を可能とする技術です。基本的には、ゴーグルや専用の機材を通じてパソコンやスマホ、ゲーム機などに接続します。しかし、メタバースは最終的にVR機材がなくても3次元空間で現実と差のない体験ができるという点で大きく異なります。あくまでも、いまはまだメタバースを使うための代用技術です。
日本企業がメタバースに参入する理由
メタバースが日本企業に注目されるようになったきっかけは、Facebook社がメタバースにいち早く目をつけて「Meta」と社名変更するほど、海外の大手企業が意識していたことです。それだけでなく、新型コロナウイルス感染症の外出に対する規制もあり、世界的に現実で人が対面しない技術が模索されたことも後押ししています。特に、日本ではゲームの内容がメタバースに近く、バーチャルなコミュニケーション方法として国内で注目を集めたことも、日本でメタバースが注目された要因となっています。
個人や企業が、対面のない会議や出勤、友人との顔合わせ・会話、旅行などメタバースに期待する下地を作ったことは、日本企業にとって技術がまだ十分でないこの段階で早々に事業参入を決めた理由でもあるのです。2022年の段階でもすでにメタバースのような空間を構築することには成功しており、足りない部分はVR技術やAI技術で補っています。なにより日本企業にとって、将来性のある技術に早期に参入して、業界のシェアを握ることは将来的な利益を生むことにもつながるでしょう。
デジタル資産(NFT)の活用
メタバースではブロックチェーン技術のデジタル資産(NFT)を使って支払いや取引をします。そのため、利用者を自社で囲い込んで、独自の経済圏を構築し、世界的にも価値を高めます。しかもその仕組みがNFTという現在ある技術を使ってすでに代替できることです。上記に挙げたブロックチェーン技術は、暗号資産にも使われており、通常はデータ改ざんの難しい技術です。インターネット上のデータは、第三者が悪意で持って改ざんや個人の情報を盗むこともあるため、安全度の高い資産構築を使えるのはメタバース発展にとって大きな魅力です。そのため、メタバースで心配されるデジタルな資産管理に対しても、じゅうぶん今の技術で補えます。日本企業にとっては、まだ技術が完成していなくても、将来性があって経済的な新規ビジネスモデルの構築ができるのであれば、日本企業は注目せざるを得ないでしょう。
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最近参入している企業一覧
ここでは最近参入している企業を一覧にして挙げます。
- NTTドコモ
- 任天堂
- KDDI
- ソフトバンク
- スクウェア・エニックス
- IMAGICA GROUP
- グリー
- シーズメン
- シャノン
- オリエンタルランド
- サイバーネットシステム
- サイバーエージェント
- エスユーエス
- 理経
- リコー
- パナソニック
- マネックスグループ
すぐにメタバース事業に参入するには
日本企業がメタバース事業に乗り遅れないためには、早期に参入して経験やノウハウを自社に蓄積することです。すぐにメタバース事業に参入する方法としては、最短で活用できる方法を事業ジャンルごとに確認します。例えば、販売系やEC系のショップは、メタバースの3次元空間に自社のエリアを作り、商品をそこで販売します。具体的な現実にある商品だけでなく、知的財産のデジタル販売などにもメタバースを通じてすぐに実現します。通常、大手会社がメタバース事業に参入するためには、会社を新設して従業員を確保し、教育を施したうえで具体的な予算決めやコストパフォーマンスを経営層や株主に説明をします。メタバースは、すぐに社員間でイメージの共通認識が得られない新しい事業企画のため、社内の調整や人材確保を十分にすることが必要です。
また、メタバースのどの分野に焦点を当てて事業を進めるのかでもその企業が担う部分が異なります。具体的には、3次元空間となるプラットフォームを構築することをメインに見据えるのか、VR技術の活用で顧客向けのサービスを展開するのか、もしくは、企業向けに事業の効率化や会議の非対面化によるBtoB向けの技術を進展するのか、などです。参入する部分を決めて予算決めや社員教育などが終われば、後は先を進む企業から良いところを学んで具体的に事業計画を練ります。以上がすぐにメタバース事業に参入するために乗り越えなくてはならないプロセスであり、最短の道筋です。
ただし、自社内にメタバースの事業を新たに立ち上げることは難しいケースもあり、出資によるメタバースの技術を取り込むという方法もあります。その場合、具体的な技術進展は関連企業に任せて、ビジネスの枠組みを発展させることが目的となります。社会経済的にまだ未成熟なメタバースに取り組む方法としては、すぐ事業参入するのが有効な手段です。なぜなら、メタバースは複数の技術が投入されており、1社のみで全てを網羅することは困難です。それよりもすでに技術のある企業を活用してビジネスモデルを作ることに注力することのほうが効率的でしょう。
メタバース事業に参入する上での注意点
メタバース事業に参入する際の注意点としては、まず多額の費用がかかることです。VRやAIの技術を活用することが増えているメタバースでは、事業のリソースを獲得するために設備投資や人材への投資が欠かせません。自社内に関連事業がなく、新たに事業を新設する場合は人材の獲得から技術獲得に至るすべてを1から予算を出して用意する必要があります。
また、画期的で将来的には価値観を変えることを期待されるメタバースではあっても、一般への認知度はまだ高くないため、事業参入してすぐに利益を確保するのが難しいことです。始めたばかりでは売上にプラスの結果が反映されず、中長期的に事業を続けるだけの下地が必要です。上記に加えて、メタバースがまだ成功モデルとして確立されておらず、手探りの状態であるため、新たに顧客向けのサービスを展開できるようなマーケティングも必要といえます。
【まとめ】メタバースの事業に参入することを検討しよう!
今回は、メタバースについて日本が事業参入する理由や背景、参入方法、注意点などを取り上げています。日本がメタバースに事業参入する理由は海外でも注目の事業であることや新型コロナウイルス感染症の背景など非対面で現実に活用できる技術が影響しています。投入資金の大きさや短期間で売上を回収することが難しいという注意点があります。しかし、今後の技術発展が見込まれるメタバースへの事業参入は早めに検討しましょう。