日本企業は海外に比べてDXが遅れていると言われていますが、賃貸不動産業界においてはその傾向が特に顕著です。それでは、海外ではどのようなDXが賃貸不動産業界で実践されているのでしょうか。
この記事では、そんな海外の賃貸不動産業界におけるDX事情について、具体的な事例とともに解説します。
賃貸不動産DXが必要とされる背景
そもそも賃貸不動産においてDXが必要とされている背景には、以下の2つの理由が大きいと考えられています。
人材不足の加速
一つは、人材不足の深刻化です。日本では少子高齢化などの影響もあり、労働人口の減少が著しくなってきたことから、新たに人材を確保することが難しくなってきています。最近では海外市場への人材流出も顕著になっていることから、相応のオファーを提示しなければ優秀な人物を迎え入れることは困難です。
賃貸不動産業は営業業務のウェイトが大きいこともあり、DXによって無駄な作業時間を極力解消し、顧客獲得に時間を割くことが求められるでしょう。
労働生産性の低さ
賃貸不動産業界は、他の業界に比べてそもそもデジタル活用が進んでおらず、労働生産性が停滞し続けている問題も抱えています。
契約手続きや重要事項説明など、紙媒体に依存した業務が数多く存在し、内見のために担当者が現場へ足を運ぶ必要があるなど、マンツーマン対応が文化として根強いことから、人海戦術をとらなければ事業の継続や成長が難しいという問題です。
日本は海外に比べてDXが遅れている?
DXの余地が大きいとされている日本の賃貸不動産業界ですが、それでは海外の不動産業界と比べて、どれくらいDXの進捗に遅れがあるのでしょうか。
海外の不動産市場において、最もテック活用が盛んなのはアメリカと中国です。野村総研の発表によると、世界における不動産テック企業の資金調達額はアメリカと中国初の企業がそれぞれ44%、35%となっており、この2国だけで世界の半数以上を占めています。
また、不動産テック企業の数についても、日本は不動産テック発祥の地とも言えるアメリカとは大きな差があることがわかっています。調査が行われた2017年時点において、日本は不動産テック企業が170社程度とされる一方、アメリカにおいては1,500社を超える企業があるなど、その差は10倍です。
参考:https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/knowledge/publication/kinyu_itf/2018/11/itf_201811_5.pdf?la=ja-JP&hash=D3BD0A5F99CF315DA544201EBF803093E261C874
もちろん、不動産テックへの投資額や不動産テック企業の数がDXの進捗に直結しているわけではありませんが、それでもこの市場規模の差は、その国におけるデジタル化推進に大きく寄与することは間違いないでしょう。
賃貸不動産DXの主なアプローチ
それでは、賃貸不動産DXを推進するにあたって、具体的にどのようなアプローチが考えられるのでしょうか。主な施策としては、以下のようなものが挙げられます。
オンライン内見・相談
賃貸不動産DX関連の施策として日本でも普及しつつあるのが、オンライン内見や担当者への相談です。直接事務所や物件に足を運ばなくとも、物件情報について営業担当者から紹介をしてもらったり、Webカメラを使ってオンラインで内見をしたりと、便利なサービスを受けられるところが増えてきました。
地方から都心部、あるいは都心部から地方への転勤や引っ越しといった際に重宝されるこれらの施策は、顧客開拓において強力な効果を発揮するでしょう。
チャットボットを使った問い合わせ
24時間365日の問い合わせ対応を実現するのが、チャットボットです。基本的な物件情報の問い合わせなどであればチャットボットとデータベースを連携し、瞬時に問い合わせ客へ情報を共有できるようなサービスが実現します。
最近ではAIを実装したチャットボットも登場しており、より複雑な回答にも応えられるようになってきたことから、今後ますます導入が増えていくと期待されるツールです。
IT重説・電子契約
法改正により、重要事項説明や賃貸契約はオンラインで実施することも可能になってきました。これまでは対面での実施が求められてきた手続きを、まとめてオンラインで行えます。
契約手続きなどのために契約者と日程を調整したり時間を確保したりする必要が小さくなるため、生産性向上に役立ちます。
その他業務のデジタル化
上記以外にも、近年は多様な業務をデジタル化することが可能になっています。顧客情報を専用データベースで管理したり、スケジュール調整を自動化したりと、紙媒体でやり取りしていた業務を電子化し、ペーパーレス化を推進するケースが増えてきました。
基本的に紙を使って進める必要のあった業務はほぼ全てデジタルで行えるため、まずはペーパーレス化からDXを進めてみるのも良いでしょう。
海外における賃貸不動産DXの事例
海外の賃貸不動産業界におけるDX事例としては、以下のような施策が挙げられます。
Truilia
アメリカで展開されている不動産情報サイトのTruiliaは、物件そのものの情報はもちろん、物件に関連するあらゆる情報を網羅的にユーザーへ提供していることで高い満足度に貢献しているサービスが評判を集めています。
担当者に問い合わせなくとも、その物件の基本的な賃貸情報はもちろんのこと、価格推移や周辺エリアの平均価格、犯罪発生率、交通量、学校やレストランなどの各施設までの距離など、多くの情報を一度に収集することが可能です。
日本よりも広大な土地を有するアメリカは、治安や周辺環境の充実度は地域差が大きく異なるため、土地勘がなければ良い家を探すのは極めて困難です。Truiliaを利用することで、その地域に詳しくない人でも家探しに十分な情報収集を実現できます。
Compass
Compassは顧客と不動産エージェントをニーズに合わせてマッチングするためのサービスです。不動産を探している顧客に対しては物件情報と物件を扱うエージェントを紹介し、エージェントに対しては物件価格の推移や顧客へのアプローチに有効な分析などの情報を提供する役割を果たします。
両者にとって透明性が高く鮮度のある情報を提供することで、速やかな契約の締結を促してくれるのが強みです。
Apartment Ocean
Apartment Oceanは、顧客へ速やかに物件情報を提供することができるAIチャットボットサービスです。見込みのあるユーザーを特定し、最適な情報を24時間いつでも提供できるサービスを活用することで、顧客と不動産事業者の関係を強化し、契約を促せます。
営業時間外の問い合わせであってもスピーディに回答ができるため、有人での問い合わせに限定されている事業者に対して大きなアドバンテージを得ることができるでしょう。
Aisa
Aisaは問い合わせ対応の抜け漏れを回避するのに役立つ、賃貸不動産向けAIチャットボットサービスです。既存の不動産サービスと連携を行い、顧客からのさまざまなリクエストに対して違和感のない回答やサービスを提供することができます。
例えば物件の内見予約のように、スケジュール調整が必要な業務についてもAisaでまかなうことができるため、業務効率化に大いに役立つことでしょう。不動産取引に特化した学習によって、極めて自然なコミュニケーションが取れる点も評価されています。
Opendoor
Opendoorはオンラインで透明度の高い不動産取引を実現することができるサービスです。物件情報を入力するだけですぐに査定額を算出し、その後専門の担当者からの連絡を経て、最終的な額が決定します。
これまでは査定の段階で多くの時間がかかってきたことから、スムーズに取引を進めることが難しい問題を抱えていました。このサービスの登場により、柔軟かつ速やかな取引を実現し、不動産の流動性を高めることが叶いつつあります。
まとめ
この記事では、海外の賃貸不動産DX事情を紹介しながら、具体的にどのようなDX施策が存在するのかについて、解説しました。
日本はまだまだ不動産テックの活躍は限定的であるものの、その必要性の高まりに伴い、今後はテック活用が一般化すると考えるべきです。初歩的なデジタル化から、少しずつ進めていくことを検討しましょう。
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