なぜマーケティング部門はコストセンター扱いされるのか?
マーケティングは事業を存続させる上で重要な役割を担っています。それにも関わらず、マーケティング部門はなぜコストセンター扱いされるのでしょうか。その謎に迫っていきましょう。
コストセンターとは何か?
コストセンターとは、業務にかかったコストだけが集計される部門のことです。反対に、利益を生む部門のことは、プロフィットセンターと呼ばれています。コストセンターは、その部門単体で収益を上げることはできませんが、結果的に作りだされる製品やサービスの品質を保つ役割を担っています。例えば、経理や総務、コールセンターなどの部門が挙げられるでしょう。自社で製造販売している場合は、その生産部門である工場がコストセンターに該当するケースもあります。そして、マーケティング部門も、このコストセンターに分類されることがほとんどです。一方、プロフィットセンターには、営業や販売などの部門が該当します。
マーケティング部門がコストセンターになる理由
マーケティング部門は、「製品やサービスが売上を上げるために必要な仕組み作りをするところ」です。市場調査や企画立案、販売促進など、手掛けている仕事は多岐にわたります。競合他社と差別化を図り、自社の製品やサービスを優位に立たせるために、なくてはならない存在でもあります。このように、製品やサービスを売るために重要なポジションではありますが、マーケティン部門自ら販売しているわけではありません。つまり、部門単体で利益を生むことができず、支出ばかり増やしているという理由で、コストセンターとして扱われているのです。そのため、経営が傾いた時などに、マーケティング部門がコストカットの対象と捉えられるケースも少なくありません。マーケティング部門を、コストセンターから脱出させるためには、価値をつくり出す部門として、経営層から認識してもらう必要があります。そのためにも、マーケティングの効果を可視化させ、利益に対する貢献度を示していくことが大切です。
MMMにより可視化できること
マーケティング部門が脱コストセンターを実行するには、MMMというマーケティング手法がキーワードとなってきます。
MMMとは
MMMは、「マーケティング・ミックス・モデリング」の略称で、マーケティング施策が成果に与える影響を定量化させる、統計学的な分析のことを指しています。マーケティング先進国であるアメリカでは大企業を中心に導入されていますが、日本ではまだそれほど浸透していません。しかし、MMMはメリットの大きな分析方法であるため、日本でも徐々に注目を集めだしています。その理由としては、消費者調査においてこれまでの方法で分析しきれなかった部分も、このMMMを使えば分析できるということが考えられるでしょう。
マーケティング施策の種類は、実に様々です。新聞や雑誌、テレビ、店頭プロモーションといったもの以外に、SNSやWeb広告などもあります。特にデジタルマーケティングの分野では多種多様なメディアが存在し、また新しいメディアが誕生することも少なくありません。そのため、企業としてはどのような手法を利用して収益アップを狙うのか、数ある方法の中から取捨選択する必要があります。さらに、どの手法を組み合わせるかも、重要なポイントとなってきます。MMMを上手に使えば、効果的なマーケティング施策を導き出せるようになるでしょう。
■mmmについて知りたい方はこちら
MMMで可視化できること
MMMを行うと、実施したマーケティング施策によって発生した、直接的な効果や間接的な効果を数値化できるようになります。直接的な効果とは成果に対する影響のこと、そして間接的な効果とは、他のマーケティング施策に対する影響のことです。これらを可視化できるようになれば、分析や検証もしっかりできるようになるでしょう。そして、さらに効果的なマーケティング施策が行えるようになるのです。
また、MMMでは、外部要因も分析の対象に含めることができます。例えば、大雨の日には店舗への客足が遠のき、売上が伸びないこともあります。競合他社が新商品を発売したことによって、自社製品の売り上げが落ちてしまうケースもあるでしょう。実際に売り上げを左右する要因には、気温や祝日など様々なものが考えられます。このような事象も、可視化して包括的な検証を行えるようになります。
MMMの手順
MMMの手順は、次の通りです。
第一段階・分析ロジックの決定
MMMの分析ロジックはいくつかあるため、最適なものを選びましょう。ここでは、パス解析と呼ばれているものを説明していきます。
第二段階・内部要因と外部要因を洗い出す
内部要因とは、これまでに実施したことのあるマーケティング施策のことです。訴求軸の異なるマーケティング施策をいくつか行っていた場合は、それぞれの訴求軸ごとに洗い出していきます。分析の目的に合わせた粒度で洗い出すことが重要です。一方、外部要因は、成果に影響を与える要因のことを指しています。例えば、競合他社のCM広告や天気など、自社でコントロールできないものが挙げられるでしょう。
第三段階・マーケティング施策の振り分け
消費者の購買行動を、それぞれ段階ごとに分けて定義していきます。例えば、商品を購入する際には、「認知」「興味」「比較・検討」「行動」といった段階が考えられます。もちろん、商品やサービスの種類によって、消費者行動は異なってきます。分析対象に応じて、最適なモデルを構築していくようにしましょう。そして、第二段階で洗い出した内部要因や外部要因を、段階に振り分けていきます。
第四段階・データ収集
ここでは、第二段階で洗い出した内部要因と外部要因について、それぞれデータ収集を行っていきます。その際には、一日単位、一週間単位といった細かい単位で出していくことも大切です。
第五段階・分析
データが揃ったら、第一段階で定めた分析ロジックに沿って分析を進めていきます。
第六段階・分析精度の向上
分析は、その精度が高ければ高いほど、より効果の高いマーケティングが行えるようになります。分析精度を上げるための調整をしていきましょう。
マーケティング部門が脱コストセンターとなるために
マーケティング部門がコストセンターから脱するためには、プロフィットセンターである営業や販売部門との連携を強化させることが大切です。どれだけ優れたマーケティングを行っていても、それが売上に貢献できなくては、何の意味もないからです。営業や販売部門との連携を強化し、情報を共有することで、はじめてその結果を出せるようになります。収益の最大化を目指すことも、不可能ではなくなってくるでしょう。
MMMという手法では、消費者の購買心理がどのように変化したか捉えることはできません。しかし、マーケティング施策ごとに費用対効果を分析することは可能です。マーケティングを最適化できる方法と言えるでしょう。さらに、クオリティの高い情報の元、意思決定できるようにもなります。マーケティン部門としての存在価値も上げていけるでしょう。プロフィットセンターとしての機能も担えるようになります。
【まとめ】MMMを導入してマーケティングの最適化を行おう
日本ではまだ歴史の浅いMMMですが、上手く活用すれば企業として収益アップを狙えるようになります。また、優れた意思決定を行うためにも、品質の高いデータを出し続けることが大切です。定期的に内容を見直し、修正を加えながら、常に正しいデータを導いていくようにしましょう。脱コストセンターも、スムーズに行えるようになります。