最適な予算配分を行うにはどうすれば良いか?
マーケティング戦略の一環として広告を展開していく上で、重要となるのは予算配分です。どの広告にどれだけ予算を投入するかを決めることは、広告戦略の成否の鍵を握ると言っても過言ではありません。では、最適な予算配分を行うために注意すべきポイントとは一体何なのでしょうか。
広告効果の良い広告への重点的な予算配分は「最適」に非ず
多くの人が、「効果が高い広告に重点的な予算配分を行えば、それだけ効果も上がるはずだ」という思い込みに囚われがちです。実は、広告効果の良い広告に対して予算を多く割くことは、最適な予算配分とイコールではありません。というのも、この思い込みには「投資額と効果が非線形である」という認識が抜け落ちてしまっているのです。
よくある事例をひとつ挙げましょう。ある商品を発売するにあたって、事前にテレビCMを放映した所、発売前の話題性が強烈でかなりの売上が期待されていました。これを受けて、テレビCMの出稿数を増やして長期的に放映を続けたところ、商品の発売後は徐々に話題に登ることも無くなり、広告の費用に対して売上が半分以下となってしまう結果に終わりました。広告にかけたコストと効果が線形であるならば、放映した分だけ効果が続くため、売上も伸びるはずです。このように、効果の高い広告への重点的な予算配分は、必ずしも最適とはなり得ないのです。
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広告投資額と広告効果の非線形について
上記で説明した例からは、効果の高い広告にかけるコストが効果に直結しないことがわかりました。次は、広告投資額と広告効果が非線形であるのは何故なのか、広告投資額と広告効果はどのような関係にあるのかを見ていきましょう。
広告の出稿量に対する効果はどこかで頭打ちになる
単純に広告をたくさん出すことが売上アップにつながるわけではありません。上記で述べた事例のように、いくら事前の広告で話題性を獲得したとしても、広告を増やしていくうちにどこかで効果が頭打ちになっていきます。もちろん広告の出稿量を増やすことは、それだけ広告費がかかることを意味しますから、結果として広告を増やせば増やすほど費用対効果が悪くなっていくのです。
広告投資額と広告効果の関係が非線形になる理由
広告の出稿量を増やしても効果が頭打ちになってしまうのは何故でしょうか。理由はいくつか考えられますが、最も有力な理由は「新奇性がなくなる」ことと言えるでしょう。広告の出稿量を増やせば、それだけ多くの人の目に留まります。出稿量を増やしていく中で広告を初めて目にする人も増えていきますが、もちろん全員がその広告を初めて見るわけではありません。中には別の時間、別の場所ですでにその広告を見たという人も存在します。そして、すでに何度か広告を目にした人も、広告の出稿量を増やす過程で増えていくのです。広告は最初に目にしたときが一番インパクトが大きいですから、2回も3回も見ていくうちにその広告を見慣れてしまい、インパクトが薄れてしまいます。結果的に、ある程度出稿量が増えた段階で、多くの人が一度はその広告を見たことがあるという状態になり、それ以降の広告効果は薄れていくのです。
メディアによる広告投資額と広告効果の関係の違い
広告投資額に対する効果の現れ方は、メディアによって異なります。例えば、テレビCMの場合は放映が開始された時点では効果が薄く、ある程度の期間CMを放映し続けることでようやく売上に貢献するという性質をもっています。一方、オンライン上の広告バナーやデジタルサイネージといったデジタル広告は、公開してから短い期間で効果を発揮する性質があるため、少ない予算と労力で売上を伸ばすことが可能です。ただし、デジタル広告を目にするのはネット接続可能な端末を日常的に扱う層に限定されるため、より幅広い層の顧客に対してアプローチをかけたい場合はテレビや新聞などのオールドメディアに軍配が上がります。
mRoasとは?
広告費用に対してどれくらいの効果が得られるかを把握するためには、定量的な指標が必要となります。そのために用いられるのがmRoasです。以下では、このmRoasとはどのような指標なのかについて解説します。
Roasとは
mRoasについて知るための前提知識として、Roasについて知っておきましょう。Roasは「Return On Advertising Spend」という英語を略したもので、日本語では「広告費用回収率」などのように訳されます。具体的に説明すると、投じた広告費用に対して、どれだけの売上が得られたかということを定量的に示す指標です。売上を広告費用で割った数値がRoasとなり、「回収率」の名が示す通り、単位は「%」で表現されることになります。例えば広告費に50万円かけた商品が100万円の売上を達成した場合、Roasは100万÷50万=2、即ち200%です。これは、広告費1円が2円の売上に貢献したことを意味します。広告費を全て回収できた100%がひとつの分水嶺と言えるでしょう。もしもRoasが100%を下回った場合、売上で広告費を回収できず赤字になっていることを意味しますから、何らかの対策を講じる必要があります。
mRoasとは
mRoasは、「marginal Roas」の略称で、「広告費用限界回収率」と訳すことができます。現在の投資額から一定量投資額を増やした場合にどれだけのRoasを得られるか、という指標で、算出方法はRoasと同様に「広告への追加投資によって得られた売上額」を「広告への追加投資額」で割るというものです。先述した例では当初広告費に50万円、その結果得られた売上が100万円でしたが、ここに追加投資で50万円を広告費として投資した結果、売上の総額が150万円になったとします。全体でのRoasは150万円÷(50万円+50万円)=1.5、即ち150%となり、この時のmRoasは(150万円-100万円)÷50万円=1、パーセンテージにして100%です。
mRoasを使った広告の評価は、追加投資前のRoasとmRoasの値を比較するという方法で行われます。追加投資前のRoasよりもmRoasの値が低ければ、広告への追加投資を行っていくにつれてRoasの値が減少していくことがわかります。RoasよりもmRoasの値が小さくなるのはよくあることですが、Roasと比較してmRoasの値が著しく小さくなったり、マイナスに転じたりする場合は広告の出稿量や投資額を増やしても意味がないため、広告そのものを見直す必要があるでしょう。
mRoasを用いた予算配分
mRoasがどのような指標なのか、mRoasを使って広告をどのように評価するのかについては先述した通りですが、広告の予算配分を行う場合、どのようにmRoasを活用すればよいのでしょうか。以下では、mRoasを用いた広告費の予算配分の方法について解説します。
RoasとmRoasを常にモニタリングする
まずは、RoasとmRoasを継続して確認することが必要です。Roasにどれだけ変化があったのか、mRoasがいくらなのかは、1回の測定だけでは正確に測ることができません。広告にどれだけ投資したのか、それによってどれだけ売上が上がったのかを定期的に観測して、RoasとmRoasの値の動きをチェックしましょう。
mRoasの値が大きい広告へ予算を多く割く
追加投資前のRoasに対してmRoasが大きい場合は、追加投資によってより高い効果が見込めるため、予算を従前より多めに割くようにしましょう。mRoasの値が減少し始めた時は、徐々に予算を削っていきます。Roasが100%を切っていたり、mRoasの値がマイナスに転じた場合は、その広告に対する予算はカットし、広告の掲載そのものを取りやめて企画段階から再考するとよいでしょう。このように、Roasの値の大きさとmRoasの値の動きを見ることで最適な予算配分が自ずと決まっていきます。
【まとめ】mRoasを見れば広告の「伸びしろ」がわかる
広告の予算配分を決めるにあたって、重要視すべきは「追加投資によってどれだけ効果を見込めるか」です。伸びしろのある広告へ追加投資を行うことで、広告による売上アップ効果を最大限に享受することができます。mRoasは、まさにその「伸びしろ」がどれだけあるかを判断する指標となるのです。広告への予算配分を効率的に行うには、mRoasをしっかりと継続的にチェックすることこそが肝要と言っても過言ではありません。