概要
法衣・宗教用品の製造販売を100年以上手がけてきた鈴木法衣店。2〜3万点におよぶ商材と顧客ごとの管理が積み重なり、業務プロセスは長い歴史の中で「詰まった」状態になっていた。kintoneによる業務基盤づくりを経て、さらなるDX/AI活用に踏み出した同社は、Fabeeeによる生成AI活用研修に取り組む。研修の最大の成果は、ツールの操作習得そのものではなかった。「まずAIに聞いてみよう」「エラーも向き合えば解消できる」という前向きな姿勢が現場に根づき、互いに教え合う文化が生まれたことだ。研修後は内製化と全社展開、そしてデータ整備へと歩みを進めている。
ご担当
- 鈴木貴央様(株式会社鈴木法衣店)
“変革”ポイント
意識
「AIは難しそう」という心理的ハードルから、「まずAIに聞いてみよう」という前向きな姿勢な醸成
業務
経験依存からの脱却とAIによる業務効率化、業務自動化を実現
事業
受け身の活用ではなく、教え合い、本人が見つけて作る内製化を前提とした文化づくりの構築
“うちは、あちこちが詰まっていた”
研修以前の課題――複雑な業務と、AI活用の素地
鈴木法衣店は、法衣・宗教用品の製造販売を100年以上続けてきた老舗である。製造から販売、調達、生産管理、顧客ごとの販売管理まで、2〜3万点の商材を抱える業務は属人化し、各所で滞っていた。

鈴木様:
業務のプロセスの構造の例えとして、よく血管にたとえます。弊社は、その血管があちこちで詰まっている状況でした。本来つながっているべきものがつながっていない。100年続いてきた会社ですが、これまでの各案件の情報やナレッジの整理がまったくできていなかったんです。各業務においてAIを活用することで同じアウトプットが出せるなら、楽できるところは楽にした方がいいと考えてきました。
ここ数年で全社の業務基盤作りと各従業員の業務効率を高めることを目的にKintoneをはじめとしたツールの導入を実現してきました。近年、AIを活用することで業務の自動化ができるニュースを聞いていたため、興味関心は持っていました。ただし、現場が本格的にAIを使いこなすには、もう一段の後押しが必要だった。
“同じ先を同じ目線で見てくれている”
Fabeeeを選んだ理由――パッケージではなく、自社理解にもとづく提案
研修パートナーとしてFabeeeを選んだ決め手は、提案の「目線」だったという。

鈴木様:
最初に佐々木さん(Fabeee株式会社 代表取締役社長)とお話しして、AIについて学びたいと思ったのが入り口でした。でも決め手はそこだけではなく、初回の面談から、うちの会社の状況に合わせた提案をしてくれたことです。パッケージ化された汎用的な提案ではなく、現状を理解したうえで「それならこういう進め方ができます」「こういう発展が望めますよね」と展望まで示してくれた。同じ先を、同じ目線で見てくれている感覚が大きかったです。
ツール導入の提案にとどまらない、伴走の姿勢も安心材料になりました。
料金や助成金活用のご支援も含めて、研修を進めるだけでなく、それを実際に実現するところまで一緒に走ってくれる。だからこそ安心してお願いできました。
“まずAIに聞いてみよう、が現場の口ぐせになった”
研修で起きた変化――技術以上に、マインドセットの育成
研修期間中に起きた最も大きな変化は、技術の習得そのものではなかったと鈴木様は言い切る。

鈴木様:
以前は、AIは便利そうだけどどう使えばいいか分からない、という人がほとんどでした。使っても、文章を整える壁打ちで終わってしまう。それがいまは「まずAIに聞いてみよう」「とりあえず使ってみよう」という姿勢に変わりました。GASやAPIに取り組んでいるメンバーも、エラーが出たら以前は立ち止まっていたのが、向き合えば解消できると実感している。つまずいても一つずつ潰していけば、作りたいものが作れる。その自信が生まれてきたのが、一番大きな変化です。
「守り」の面でも、AIとの向き合い方への理解が深まった。
AIで何でもできると思っていた人が多かったのですが、得意分野があって、ちゃんとインプットしなければ必要なアウトプットは返ってこない。むやみに放り込めばいい、という発想ではなくなりました。AIをどう扱うか、という理解が高まることに繋がりました。
“抵抗勢力に、出会ったことがない”
教え合う文化――主体性とリーダーの橋渡し
新しいツール導入では「抵抗勢力」が壁になりがちだが、同社ではそうした存在はほとんど見られないという。研修への向き合い方にも、それが表れた。

鈴木様:
これまで何度もツールを導入してきましたが、導入時に抵抗に合うということは一度もありませんでした。どちらかといえばみんな、煩雑な業務にうんざりしていて、楽になるならぜひ楽にして欲しい、という方が強い。会社として「まずやってみよう」「失敗はあればあるだけいい」という文化もありますが、それ以前に、もっといい成果を出したい、お客様や同僚に貢献したいというスタンスの人が多いです。
研修で生まれた前向きさは、「教え合う文化」としても表れた。
AIを使い始める動機として、自分の業務を楽にしたいというのも十分いい動機です。でも実際には、「これは他の人にとってもいい機能だから実現したい」「この部署の人が楽になるから作りたい」という声ばかりでした。お客様や同僚が喜んでもらえるはず、と考えて取り組んでくれる。本当に誇らしかったですし、嬉しかったですね。
いまはリーダー層が現場との橋渡しを担い、変化が自走し始めているという。
“浮いた時間で、お客様と向き合う”
研修後の展開――内製化と、全社への広がり
次のステップは、研修参加メンバーの学びを全社へ広げることだ。広げ方には、明確な方針がある。

鈴木様:
まずは参加メンバーが、考えたアイデアを実際に使える形にする。次に、それを参加していないメンバーが触ってみて「こんなことができるのか」と気づき、自分でも作ってみる。そうやって全社的なムーブメントに変えていきたい。ただ、興味を持った人にすぐ答えを教えるのではなく、本人に見つけさせるように流す。受け身になると、かえって業務負荷が上がってしまうので、作り方と向き合い方を教えてあげる、という関わり方を徹底してもらっています。
全社展開における最大の課題は、データの整備だと位置づける。
あちこちに、いろいろなフォーマットで情報が散らばっている。これを整備しなければ、AIの効果は最大化できません。地道に取り組むしかありませんが、そこを越えれば、AIで業務負荷を下げ、浮いた時間でお客様と向き合う――その好循環を回していけると思っています。
変化の激しい領域だからこそ、内製化を軸としつつ、外部の知見にも頼っていく構えだ。
研修メンバーのうち何人かは、自分からClaudeの活用に意欲的です。まずは活用の余地のあるツールに関しては、アカウントを開放して試してもらう。ただ、全部を社内でキャッチアップするのは現実的ではないので、最新の技術や自社だけでは対応できない分野は、これからも外部のご協力をいただきながら進めていきたい。
締めの言葉に代えて
インタビューを通して感じたのは、「正解を探している」というより、「自分たちでつくれる確信を育てている」という姿勢でした。
効率化や時間の圧縮は、たしかに目に見える成果です。だが、鈴木様が何度も「一番大きな変化」と口にしたのは、数字ではなく、現場の一人ひとりが「まずやってみよう」「つまずいても一つずつ解消すればいい」と思えるようになったこと。研修が残したのは、操作スキルだけではなく、AIと向き合う姿勢そのものでした。
私たちFabeeeは、ツールを「入れて終わり」にしないために、研修を通じて現場に学びと自走の力が根づくところまで伴走いたします。鈴木法衣店の挑戦に、これからも寄り添っていきたいと思います。
