製造業界はDX課題を多く抱えているとされており、化粧品メーカーも例外ではありません。そもそも、DXの必要性が叫ばれながら、化粧品製造業でDXがスムーズに進まないのにはどのような理由があるのでしょうか。
この記事では、そんな化粧品製造業におけるDX課題とは何かを解説しつつ、問題解決を進める上で検討したいポイントを紹介します。
化粧品製造業における主なDX施策
DXとは業務のデジタル化によって生産性の向上や働き方の刷新を推し進められる一連の取り組みを指しますが、化粧品製造業においては以下のようなDX施策が主な例として挙げられます。
品質管理システムの導入
品質管理システムは、化粧品製造業であれば速やかに導入したいITソリューションの一種です。化粧品製造においては、製造プロセスを逐一把握し、不良品が発生してしまったり、不良品となりうる要素をはらんだ加工中の品を排除し、余計な生産コストが発生してしまったりする事態を回避することが求められます。
品質管理システムの導入は、このような製造工程のモニタリングを自動で行い、不良品の発生を未然に回避したり、不良品が商品として扱われるような事態を回避したりすることを実現します。
在庫管理システムの刷新
近年の在庫管理システムは、従来のシステムに比べはるかに正確かつスピーディな運用ができるよう開発されています。商品在庫はもちろんですが、原材料在庫についての正確な管理は化粧品製造業界には必須とも言え、使用期限や検査日、仕入れ先などを正しく把握することで、高い商品価値を維持することが可能です。
在庫管理システムを刷新することで、このような高度な在庫管理をシステムで自動化できるため、業務の属人化を回避したり、多くの時間を在庫管理に割いたりするケースを解消できるでしょう。
生産ラインのハイテク化
近年は次々と新たな化粧品ブランドが登場していることからも分かるように、化粧品製造の需要は高まりつつあります。そのため高い生産力を実現していることは、より多くの成長機会を獲得できるチャンスにつながるため、ハイテク化の必要性は高いと言えるでしょう。
最新のロボットやIoTを使った高度なセンシング技術の導入によって、品質と生産力を同時に強化し、優れたメーカーとしての実績を得られるようになるはずです。
その他ペーパーレス導入など
現場作業のDXばかりが注目されますが、化粧品製造業においては基本的なペーパーレス化施策も依然としてその必要が残ります。日々の日報作成やエクセルシート作成などは、初歩的なDXソリューションの導入で簡単に自動化が可能です。
大規模な設備導入には時間もコストもかかるため、まずはこういったデジタル化から順番に進めていくのも一つの選択と言えるでしょう。
化粧品製造業が抱えるDXの課題
化粧品製造業には上記のように、多様なDX施策を実行できる余白が残されていますが、一方でDXを実行に移せない、いくつかの課題も浮き彫りになっています。
DX人材が不足している
最も大きな課題として挙げられるのが、DX人材の不足です。DXはハイテクソリューションであるため、従来の考え方やスキルでは導入や運用を進めるのが難しいケースもあります。
そのため、DXを推進するために企業は専門のエンジニアやコンサルタントを雇うケースもあるのですが、こういったDX人材は近年の需要拡大に伴い、気軽に確保することが難しくなってきました。
DX人材の確保には多くの予算が必要で、それゆえにDXを推進するための起爆剤が得られずデジタル化が停滞している、というようなケースは珍しくないでしょう。
DXの予算と時間が確保できない
DX人材の確保もそうですが、規模の大きなDXを実施するとなると、そのための設備投資や設備導入にかける時間を確保することが求められます。
生産ラインをアップデートする場合は一定のダウンタイムが発生する可能性も高く、その分の穴埋めをどのように行うのかが懸念事項となり、いつまでもDXのタイミングを逃し続けてしまう問題です。
DXに失敗する主なケース
また、DXはただ実施するだけで確実に成果が得られるとは限らず、場合によってはDXに失敗するケースも存在します。DXが上手くいかない要因としては、主に以下のようなものが挙げられます。
ツールを有効活用できない
ひとつは、導入したツールを有効活用できないというものです。せっかく導入した高級なツールも、その使い方がわからなければ宝の持ち腐れとなってしまいます。
積極的に活用を呼びかけないと、現場の人間もやり慣れた従来の業務プロセスを優先してしまうため、いつまでもツールの浸透が進みません。
想定よりもコストが上回る
導入したDXソリューションが、想定よりもコストパフォーマンスがよくなかったというケースも考えられます。自社で運用するためには想定以上のカスタマイズが必要であったり、大きな規模で導入したりする必要に迫られることが原因です。
コストパフォーマンス改善のためのDXが、今度は大きなコスト負担を導入企業に強いることとなります。
DXの理解が乏しい
そもそも従業員のDXへの理解が乏しいと、DXに対して前向きに考えてもらいにくいという問題もあります。DXによって何がどのように変わるのか、どんなメリットが得られるのかが理解されなければ、従来型のワークフローからの脱却は難しいでしょう。
化粧品製造業が実践すべきDXのプロセス
上記のような失敗を回避するためには、化粧品メーカーが以下のようなプロセスでDXを進めていくことが重要です。
現状の把握
まずは、自社業務の現状を把握します。どのようなワークフローになっていて、それぞれの業務にどれくらいのリソースを割いているのか、生産コストはどれくらいかかっているのかなどを改めて具体化しましょう。
課題の洗い出し
続いて、現状把握から見えてきた自社の課題を見える化します。生産性向上の余地はどのような部分に存在するのか、何を改善すれば品質を高め、コストを削減できるのかなどを書き出すことで、自社で実施すべきDXの方向性を定められます。
ソリューションの選定・導入
必要なDX施策が判明したら、ソリューションの選定と導入を進めます。自社の課題と検討しているアプローチを相談し、最も自社と相性の良さそうなサービスをいくつかピックアップし、比較検討することが大切です。
研修制度の整備・実施
DXソリューションの導入に合わせて、従業員向けの研修やDXへの理解を深める機会を設けましょう。実際に現場でツールを使ってもらえないことにはDXの意味がないので、導入前に十分な研修機会を設けます。
また、ツール活用のためのサポートデスクなども開設しておき、いつでもトラブルシューティングができる体制を整備することも必要です。
効果測定・改善
DXソリューションが現場で正しく活用されているか、どれくらい生産性に影響などを与えているかなどを、継続的に評価することも大切です。効果測定の結果をもとに改善施策を実施することで、より導入ツールを効率よく運用し、パフォーマンスを高めることができます。
DXを成功に導くポイント
DXが成功するかどうかは、上記のようなDXのプロセスを正しく踏みながら実施することにかかっていると言っても過言ではありません。また、実際にDXを行うにあたっては、スモールスタートで進めることもおすすめです。
DXを小規模から始めることによって、施策導入による一時的なパフォーマンスの低下を小さく抑えたり、失敗のリスクを最小限にとどめたりすることができます。
また、DXを強力な意思決定権を持つ経営者が主導して実践することも大切です。経営者主体でDXを進めることで、DXにかかる時間を最小限に抑え、迅速に結果に結び付けられます。
まとめ
この記事では、化粧品製造業界がDXを実施するにあたって直面している課題や、その解決策について解説しました。DXには多様なアプローチがあるものの、抜本的な改革や規模の大きなDXを進める際には検討事項やリスクもあるため、慎重にことを進める必要があります。
まずは自社の課題を明確に把握した上で、スモールスタートでDXソリューションの導入を進めることも検討しましょう。DX人材の確保や専門のコンサルへの相談も進め、DXノウハウの蓄積や環境を充実させることも必要です。
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