メタバースとデジタルツイン、どちらもデジタル技術を利用した高度なシステムです。しかし、この2つは似ている部分があるため、明確な違いがわからないという方も見られます。そこで本記事では、メタバースとデジタルツインの違いについて解説。併せて、それぞれの活用例やデジタルツインを活用するメリット、今後の展望なども紹介します。
メタバースとデジタルツインはどう違うの?
まずはメタバースとデジタルツインの違いを見ていきましょう。それぞれどのようなものか内容や特徴などを解説します。
メタバースとは
メタバースは、仮想空間で形成される人間社会のことです。仮想空間は現実世界ではありませんが、自分のアバターを通じて現実世界のようなコミュニケーションや経済活動を行えます。例えばメタバース内でほかのアバターに話しかけることができます。専用のコミュニティルームのようなものを作成し、そこに入ったアバターとコミュニケーションをとるなどのパターンもあります。さらに、メタバース内でイベントを開催したり、メタバースでアイテムなどの売買を行ったり、メタバースの土地の売買を行ったり、多彩な活動が可能です。メタバースに現実世界の著名人や企業が参加することがあり、その人間社会の形成は非常にリアルです。
なお、利用時は専用のゴーグルを装着して、アバターを操作しながら目に映る3D上の仮想空間を移動します。そのほか、ゲームのようにパソコンやスマートフォンなどで操作するタイプのメタバースも見られます。
■メタバースについて知りたい方はこちら
デジタルツインとは
デジタルツインとは、現実の情報をデジタル上でそっくりに表現し、分析やシミュレーションなどを行うことです。現実世界の対のような存在であるツインの世界をデジタル空間で再現するため、「デジタルツイン」と呼ばれています。現実の情報に基づきツインを作成するという概念自体は以前から存在していたものです。デジタル技術がまだ未熟で、かつ浸透していなかった時代は、模型での複製など現実世界にツインを作ることで対応していました。現代ではデジタル技術の発展や、デジタルをさまざまな部分に取り入れることが一般的になってきたなどの背景から、デジタルツインが活用されるようになったのです。
メタバースとデジタルツインの違い
メタバースとデジタルツインは、仮想空間を利用するものだという部分は似ていますが、違う点もあります。違いの1つは内容です。メタバースは仮想世界であり、必ずしも現実世界と連動したデジタル空間である必要はありません。現実では存在しないような世界観の仮想世界もメタバースです。一方、デジタルツインは現実空間との連動が前提となっているため、現実世界からかけ離れた空間にはなり得ません。どのような空間を作るものなのかという根本が異なります。
また、仮想空間を作る目的も違う点です。メタバースは主に、人とコミュニケーションを取るために使われます。一方、デジタルツインは現実ではできない高度なシミュレーションをするために使われるものです。ただし、メタバースとデジタルツインは全く別物というわけではありません。仮想世界を形成するメタバースの中に、現実世界を再現したデジタルツインがあるという位置づけであり、デジタルツインはメタバースの一部を構成する要素なのです。
メタバースとデジタルツインの活用例を紹介!
メタバースとデジタルツインの特徴や違いがわかったところで、次はそれぞれの活用例を紹介します。
メタバースは非常に幅広い分野で活用されています。例えば、オンラインゲームは活用例の1つです。オンラインゲームはネットワークを利用することにより、ほかのユーザーとゲーム世界の中で交流したり、協力したりしながらゲームを楽しめます。ゲームという仮想世界の中で活動するメタバースなのです。なお、ゲーム内でイベントが開催されたり、ゲームで使用するアイテムの売買が行えたり、ゲームと連動した経済活動が行えます。
また、ビジネスプラットフォームとしても活用されています。バーチャル空間のコミュニケーションをもとに、現実世界のビジネスを進めることが特徴です。例えばバーチャル会議室として利用すれば、ユーザーはどこからでも参加できます。リアルに集まらなくても良いため、遠隔地にいる人なども会議に呼ぶことができます。また、資料やデータも参加者間で手軽に共有が可能です。紙ベースで作成しなくとも良いことから、手間やコストの削減も期待できるでしょう。そのほか、イベントやライブの活用もよく見られます。実際に会場に足を運ばずとも良いため、どこからでも参加が可能で、しかも自分がその場にいるかのような迫力や臨場感を味わえることが特徴です。
デジタルツインのよくある活用例
デジタルツインは、主に各産業や公共に関することなどに活用されています。例えば、工場などの製造現場における機械のテストは活用例の1つです。仮想空間で機械の運転や耐久テストを行うことで、現実にある機械のクオリティの向上に活かせます。また、渋滞や流行を予測するシミュレーションでもデジタルツインが活用されています。道路や車両データ、感染経路などから予測を立て、デジタルツインで仮想空間に反映させます。こうすることで、実際に渋滞や感染流行などが発生した場合の状況を事前に把握できるため、発生した場合にもスムーズに有効な対応が行えるのです。
そのほか、都市モデルの構築や整備も活用例です。交通や人流解析、災害リスクの可視化、新たな都市開発計画などに役立っています。デジタルツインを使うことで、都市に起こり得る事象を具体的にシミュレーションし、未来への備えや、より良い街づくりが可能になります。
デジタルツインを実現させるために必要な技術
デジタルツインは非常に高度なデジタル技術により実現されているものです。ここでは、デジタルツインを実現させるために必要な技術を紹介します。
AI
AIとは、人工知能のことです。デジタルツインでは、AIを使った画像解析技術が活用されています。仮想空間内で物の距離を測ったり、適切な位置に付随情報を追加したりするためです。デジタルツインは現実そのままのものを仮想空間に作ることで、初めて現実に即した検証やシミュレーションが可能になります。つまり、作成においては精度が命です。AIの活用によってデジタルツインの精度が高くなり、より複雑でリアルなシミュレーションも可能になっています。
IoT
IoTとは、建物や機械などを直接インターネットへ接続する技術の総称です。「Internet of Things」の略であり、日本語では「モノのインターネット」と訳されます。日常生活の中では、例えば、機器の遠隔操作などに使用されており、身近で活躍する技術の1つです。デジタルツインにおいては、現実世界の情報やデータを収集・蓄積するために使われています。現実とそっくりなツインを作成するためには、現実世界のオリジナルの情報をできる限り細部まで詳細にデジタルへ取り込むことが大切。IoTで質が高いデータを多く収集することにより、デジタルツインの精度が高められます。
xR
xRとは、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)などの技術の総称です。VRは仮想空間を現実のように体感できる技術。ARは現実の世界に仮想的な世界を重ねる技術です。例えば、スマートフォンのカメラなどをかざすと、その場所に仮想的なキャラクターが実在しているように見えるなどがあります。MRはARをさらに進化させた技術で、より仮想的なものをよりリアルに体験できます。xRは、現実世界をデジタル空間上に再現するために不可欠です。xR技術を駆使することにより、さらにリアルで現実に近いデータを仮想世界に重ねることができます。
5G通信
5G通信(第5世代移動通信システム)とは、次世代の高速通信規格のことです。これまでと比べて通信速度が大幅に向上し、より安定した接続が可能になります。デジタルツインにおいては、データのやり取りに関し利用されています。デジタルツインを作るためには、ベースとなる膨大なデータを受信する必要があります。また、デジタルツインの運用によって得られた大量のデータの送信も行われます。データの量が多いほど、送受信に負荷がかかりやすくなりますが、5Gを活用することで、遅滞やラグのない、リアルタイムでのデータ更新ができるのです。
メタバースとデジタルツインがすでに活用されている分野とは?
メタバースとデジタルツインの特徴や違いが理解できたところで、それぞれがどのように活用されているのか、事例を挙げてご紹介します。
メタバースはオンラインゲームに活用されている
メタバースは、現実とかけ離れた仮想空間を作り出せるポテンシャルがあるため、すでにオンラインゲームでの活用が進んでいます。オンラインゲームは、インターネットを介して他のユーザーとゲームの世界で交流したり、協力してゲームが楽しめる点がオフラインゲームと異なります。メタバースのゲームは、単にゲームが行われる空間にユーザーが集まって試合をしたり、対決をするだけではありません。仮想空間内でゲームに関係したイベントが開催されたり、ゲームに使用するアイテムが売買されるなど、経済活動も行われるようになっています。
デジタルツインはビジネスやイベントでの活用が始まっている
現実世界をデジタル空間で再現するデジタルツインは、ビジネスでの活用がすでに始まっています。その一つが、バーチャル会議室です。バーチャル会議室を使えば、ユーザーは特定の場所に集まらなくても会議への参加が可能になります。遠隔地からでも会議に参加できますし、資料やデータを共有しやすい点もバーチャル会議室のメリットと言えるでしょう。バーチャル会議室は、会議に集まる交通費などのコストや紙ベースの資料作りの手間も省くことにつながります。
デジタルツインはメタバースと同様、人との接触が制限されたコロナ禍も手伝い、イベントやライブでも活用され始めています。会場に行くことなく、自分がその場に参加しているかのような迫力ある臨場感を味わえるのが一般的な映像と異なる点で、デジタルツインのメリットと言えます。
デジタルツインのメリットは?
幅広いフィールドで活躍しているデジタルツイン。ここからは、デジタルツインのメリットを具体的に紹介します。
仮説検証やシミュレーションがしやすい
デジタルツインは、現実世界や特定の事象をそのままデジタルで再現できます。そのため、仮説の検証やシミレーションをしやすいことが大きなメリットです。プロトタイプを現実に作成し検証やシミュレーションを行う方法もありますが、実際のものを作成することは、デジタルより時間がかかります。また、プロトタイプの作成に使用する原材料や作成に要する人件費など、コストもかさむことに。さらに、検証自体も基本的に人の手によって行われる部分が多いため、そこでも手間が発生します。デジタルツインを利用すれば、デジタルでまかなえる部分が多いので、物理的な検証に費やしていた時間やコストを削減できるでしょう。
メンテンナンスがスムーズにできる
デジタルツインはこれから作成するもののほか、現在稼働している機械の運用などにも使えます。例えば、生産ラインの運用においてデジタルツインを活用することで、生産機器に今後発生し得るトラブルの予測や故障の予防ができます。生産ラインで突発的に機器トラブル・故障が発生すれば、生産がストップしてしまう事態にもなりかねず、大きな損失につながる可能性があります。デジタルツインを利用すれば、このようなトラブル・故障を予測できるため、もしトラブルが発生したときにも、問題点や改善策も把握しやすくなります。その結果、定期メンテナンスの頻度を減らすなどのメリットが生まれるでしょう。
迅速で丁寧なアフターフォローが可能になる
デジタルツインは、製品を提供した後、迅速で丁寧なアフターフォローを行うためにも役立ちます。出荷後の製品に関する情報を収集し、その情報に基づいたデジタルツインを作成すれば、今後必要になるであろうアフターフォローが見えてきます。そのため、実際に顧客から希望や問い合わせが発生した際、タイミングよく適切なアフターサービスを提供できるでしょう。つまり、顧客のニーズに対し、迅速な対応が可能になります。また、丁寧なアフターフォローをすることで、企業価値や顧客満足度の向上も期待できます。
企業のデジタルツインを使ったビジネス事例6選!
富士通による世界中の工場の遠隔管理
電子機器製造を行っている富士通は、世界中に提携している工場があります。その工場の一部をデジタルツインで再現し、遠隔で管理しています。工場の建物や、実際に使用されている設備を仮想空間にそのまま再現することで、遠く離れた場所からでも、実際に工場にいるような現実的な確認が可能です。そして、メンテナンス時や、万が一のトラブルが発生した時には、日本にいるベテラン技術者が、遠隔で指示を出すことができます。ベテラン技術者が直接海外まで足を運ぶ必要がないため、問題解決までの時間短縮や、交通費の削減に繋がるデジタルツインの活用法です。
旭化成のベテラン技術者による遠隔サポート
化学や住宅、繊維など、幅広い分野で活躍しているメーカーである旭化成は、福島の水素製造プラントにデジタルツインを取り入れています。プラントを稼働させるためには、ベテランの技術者の存在が不可欠です。しかし、豊富な知識や経験を持つベテラン技術者の数は、決して多くありません。そのため、出張や退勤によって、プラントにベテラン技術者が滞在していない時間帯が生まれます。そのような時間帯に、設備トラブルなどでベテラン技術者のサポートが必要になった場合に備えて、プラントがデジタルツインで再現されています。そのデジタルツインを使用すると、ベテラン技術者がプラントまで足を運ぶことなく、遠隔でサポートできます。
日立はデジタルツインで製造ラインを可視化
電機メーカーである日立は、デジタルツインを活用して、工場の製造ラインを可視化しています。工場内で勤務する人や設備など、あらゆる人やものに関する情報を、数万個の非接触タグを用いて収集し、デジタルツインが作られました。そうして、デジタル空間で再現された製造ラインは、製造スケジュールの管理や、設備トラブルの早期発見などに活用されています。
テスラによる車両の自動遠隔アップデート
自動車メーカーであるテスラは、車両の遠隔アップデートを行うために、デジタルツインを活用しています。デジタルツインによるアップデート対象となるテスラの自動車には、センサーが搭載されています。そのセンサーは、車両の走行状態や周囲の天候などの様々な情報を収集しており、その情報を元にデジタルツインが作られています。そして、デジタルツインを元に、車両が自動で遠隔アップデートされます。そうすることで、車両をアップデートする際に、エンジニアによる点検や診断を行う手間が省けています。
鹿島建設はデジタルツインで建築をトータル管理
大手ゼネコンである鹿島建設は、建物の建築における、設計や施工管理などを、ひと通りデジタルツインで再現しています。建築現場を仮想空間に再現することで、遠隔での管理を行ったり、建築予定場所を仮想空間で再現して、風雨が建物に与える影響を確かめたりするなど、様々な形で活用されています。中でも、2020年に竣工したオービック御堂筋ビルは、鹿島建設で初めてデジタルツインが採用された建築物として有名です。
ダイキンは製造ラインの停止予防を目的としてデジタルツインを活用
空調製品を製造しているダイキンは、堺製作所臨海工場内の製造ラインの停止を未然に防ぐために、デジタルツインを活用しています。工場内の設備情報をセンサーやカメラで把握して、デジタルツインが構築される形です。そして、デジタルツインによって、リアルタイムで製造ラインを管理し、製造ライン停止の大きな原因となり得る、特定の作業の遅れや設備以上をいち早く見つけ出します。
メタバースとデジタルツインの今後はどうなる?
現在、メタバースは主にエンタメ業界、デジタルツインは製造業界を中心に活用が進んでいます。現時点で高度な技術が使われており、その精度には一定のクオリティがあります。しかし、どちらもまだ改良や進化の余地がある、発展途上の技術とも言えます。メタバースやデジタルツインなど、仮想空間を形成する技術がさらに進むことで、より現実に近いコミュニケーションや現実に近いツインを叶えられるでしょう。また、今後法整備やVR機器の普及などが進めば、さらにさまざまな業界で活用される見込みがあります。
なお、それぞれがさらに発展すれば、その過程の中でデジタルツインの中にメタバースの要素を取り込んだり、メタバースの世界にデジタルツインが作られたり、お互いの要素を取り入れた形も発生するかもしれません。その結果、両者の境界は曖昧になる可能性があります。
【まとめ】独自のメタバースプラットフォームを構築してみよう!
先述した通り、デジタルツインはメタバースの一部を構成する要素です。そのため、デジタルツインを活用する場合も、まずはメタバースの構築が必要になります。独自のメタバースプラットフォームを構築するなら、メタバースパッケージを利用するのが良いでしょう。パッケージとしては「Fabeee Metaverse Package」がおすすめです。
こちらのパッケージは200万円から独自のメタバースを構築可能。メタバースの内容にもよりますが、構築にかかる費用は一般的に数百万円から、高いものなら1,000万円以上かかる場合もあります。200万円からというリーズナブルな価格は大きな魅力です。また、最短1ヶ月で納品可能なスピード感も特徴の1つ。構築完了まで時間がかかってしまえば、その分メタバースを実際に活用する時期も遅れます。最短1ヶ月でメタバースが完成すれば、メタバースが必要と感じたときすぐに構築を始め、短期間で運用につなげられるでしょう。
また、エンジニア不要でメタバースプラットフォームを構築できるところもポイント。メタバースプラットフォームを一から作成するとなれば、専門的スキルを有したエンジニアの確保が必要になります。この際かかる手間や時間、コストも省けます。さまざまな魅力があるFabeee Metaverse Packageを使って、独自のメタバースプラットフォームを構築してみましょう。