投稿日 2024.01.15

最終更新日 2024.01.15

賃貸不動産DXの「AI」を活用した事例をご紹介

賃貸不動産DXの「AI」を活用した事例をご紹介

賃貸不動産DXでAIでできること

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、AI(人工知能)などのデジタル技術の採用による、業務の革新のことです。デジタル技術を通して、ビジネスモデル・業務の進め方・組織の体制などに影響を与えることで、新たな価値観を生み出し、企業競争力を高めます。賃貸不動産DXは、DXの考え方を賃貸不動産に利用したものです。賃貸不動産に関わる業務の刷新および改革を、デジタル技術で実現します。では、AIを用いた賃貸不動産DXは何を可能にするのでしょうか。以下で見ていきましょう。

業務の簡略化や自動化

賃貸不動産に関わる業務では、物件の画像選出・文章や図面の作成・顧客データの管理といった、人手がかかる作業が少なくありません。ですが、これらの作業はAIのサポートによって簡略化ができます。また、撮影を済ませた物件の写真から、自動的にカテゴリーに適した画像を選出するといったことも可能です。AIとIoT(Internet of Things)を合わせて利用すれば、インターネットを通して臨場感あふれる内見を可能にしたり、現場の写真を用いて図面を作成するといったこともできます。賃貸不動産とAIを併せて利用し、業務の簡略化や自動化が実現できれば、人員にかかるコストを低減させることもできるでしょう。

客観的な物件の価格評価

賃貸不動産における価格設定は、地価・年数・需要などさまざまな要素が関わりますが、最終的には不動産業者の経験から賃料が設定されることが一般的です。しかしこれでは、熟達した不動産業者でない限りは、市場からかけ離れた賃料を提示するリスクがあります。AIを用いれば、客観的かつ安定的な基準を元にして、賃貸物件の賃料を決定できるようになります。

空き室解消の提案

空き室が多くなると賃貸物件の収益率が下がってしまいます。少しでも多くの利益を得るには、空き室となる理由を把握し、原因を排除しなければなりません。AIを用いれば、近隣の物件の、賃料・設備・築年数・間取りといった情報を元に、空き室となる理由が推定しやすくなります。

安全性の向上

賃貸物件における安全性のニーズは年々高まっています。AIを用いて賃貸物件を管理することで、物件の安全性を向上させることが可能です。例えば、顔認証システムの導入が多くの賃貸物件で進められています。これによって、入居者以外の共用部分やエレベーターの利用を抑制し、賃貸物件のセキュリティを高められます。

賃貸不動産DXでAIを活用した事例

賃貸不動産DXでのAI活用事例から、企業の業務サポートに効果があったと考えられるものを、以下に紹介します。

文字認識システム「Intelligent OCR」

株式会社レオパレス21は、賃貸不動産におけるデータ入力作業の簡略化を目的として、「Intelligent OCR」を導入しました。これは、書類から文字を認識し、デジタルデータとして自動入力するシステムです。AIを用いた高い文字認識精度を持っているため、手書きの文書にも対応。入力業務の効率化を実現し、さらにコスト削減にも効果がみられました。また、システムの導入によって、紙面で保管していた書類も、デジタルデータとして保管するようになりました。これによって顧客の個人情報のセキュリティも強化できたそうです。

家賃審査業務を簡略化「審査AIシステム」

2023年2月から、大東建託パートナーズ株式会社では、家賃査定業務に「審査AIシステム」の本格導入を開始しています。家賃査定とは賃貸物件の想定賃料を決めることです。このシステムは、独自の家賃査定モデルを元にして、自動的に家賃審査をしてくれます。審査AIシステムは、家賃審査における机上査定業務を大幅に短縮。業務効率化の実現に効果が見られました。
 
賃貸不動産DXにおけるAI活用事例の中から、主に賃貸物件利用者の利便性向上に効果が見られたと考えられるものを紹介します。

24時間リアルタイムで対話可能「AI ANSWER」

野村不動産株式会社では、24時間365日問い合わせに対応できるように「AI ANSWER」と呼ばれるAIアシスタントによるチャットシステムを採用しました。このシステムは、物件検索と不動産知識の解説に特化しており、ユーザーの質問状況に沿った回答が得られます。ユーザーは質問したいときに気軽にチャットに話しかけるだけで、面と向かって聞きづらいことであっても、回答が得られます。ユーザーの利便性をアップさせるだけでなく、従業員の問い合わせ対応への負担軽減にも効果が期待できるシステムです。

作業効率とエネルギー消費低減に効果的!空調制御の事例

東京建物株式会社では、AIが室内のデータを分析して、オフィスビルの空調管理をしています。これによって、人が操作しての空調管理よりも、オフィスビル内の温度ムラを解消できました。快適な室温を常に保っているため、室内環境のストレスが少なく、オフィスワーカーの作業効率のアップも見込めます。また、余分に温度調整しないため、エネルギー消費の低減にも効果的です。

相互コミュニケーションツールとなった「AI INFO」

ライフスタイルの多様化などにより、近年の集合住宅の住環境では、管理人と顔を合わせることが少なくなりました。それによって、集合住宅内での暮らし方のルールを住民に周知することが難しくなったという問題が起きています。逆に住民の視点からは、集合住宅についての意見を、管理会社や管理人へと伝えることが困難になっています。相互のコミュニケーションの問題を解決したシステムが、株式会社大京の「AI INFO」です。
 
AI INFOは、集合住宅の共用部に設置されたディスプレイや、住民のスマートフォンへと情報を通知する、AIを用いたマンション管理システムです。例えば、ゴミの分別方法・理事会の案内・イベント情報などが通知されます。また、フィードバック機能も付いているので、住民からの問い合わせがしやすくなりました。AIによって集合住宅での生活に必要な情報を一元管理できるようになったことで、よりストレスが少ない、便利な暮らしが実現できたといえるでしょう。

賃貸不動産DXのAIを活用するポイント

賃貸不動産DXにおいてAIをうまく活用するには、次のようなポイントに配慮することが大切です。

人材の確保に努める

一般的にAIの導入は業務の簡略化や自動化を実現してくれます。ですが、AIを使った作業に、誰もがすぐに対応できるわけではありません。AIの活用を検討する際には「人材」に目を向けることが重要です。複雑なシステムを導入する場合には、AIについての専門知識やスキルを持った人材の確保や、既存の従業員への教育を、システム導入に先だって済ませておくようにしましょう。

AIで可能な作業かどうかを見極める

21世紀以降、目まぐるしいほどの発展を見せたAIですが、すべての作業を任せられるほどには、いまだ成長していません。AIには得意なジャンルと苦手なジャンルがあります。AIを導入する際には、任せたい業務がAIでも可能かどうか、よく確かめましょう。特に、雰囲気や居心地といった、数値では表しにくい情報が多く用いられる場合は、AIでなく人が判断するとよいでしょう。AI任せにしないことが、うまくAIを活用するポイントです。

長期的な活用を視野に入れる

ほとんどのケースにおいて、AIを導入したとしても、すぐには効果が表れません。AIが豊富なデータから学習し、判断が最適化されるまでには、時間がかかるからです。そのため、AIの導入にはあまり迅速な結果を期待しないことがおすすめです。AIを導入する場合は「長期的な活用」を視野に入れなければなりません。
 

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この記事の監修者

阿部 雅文

阿部 雅文

コンサルタント

北海道大学法学部卒業。新卒でITベンチャー企業入社し、20代で新規事業の事業部長を経験。その後さらなる事業開発の経験を積むために、戦略コンサルティングファームにてスタートアップ企業からエンタープライズ企業のデジタルマーケティングや事業開発におけるコンサルティング業務に従事する。2021年5月にFabeeeにジョイン。DXコンサルタントとして大手メーカーや総合商社などを担当するほか、数多くのクライアントから指名を受け、各社の事業開発を支援中。多忙を極める中でも、丁寧で迅速な対応が顧客から高い評価を得ている。