生成AIとは?
生成AIとは、学習したデータを元にして自動的にコンテンツを生成できる人工知能です。生成できるコンテンツは、画像・文章・図面・プログラミングコード・音楽など多岐にわたります。生成AIは「0から1を作り出すAI」と表現されますが、人間の指示やプログラムがベースであるため、厳密に言うと無から有を生じさせているわけではありません。それでも、人間のアーティストやクリエーターは、知らず知らずのうちに過去の作品からインスピレーションを得て独自のコンテンツを生み出していることが多いものです。そう考えると、生成AIは人間が制作物を生み出すプロセスと似通っているといえます。
生成AIの種類と代表的なサービス
生成AIの種類は大きく4つに分けることができます。まず一つが、テキスト生成です。テキストを作成できる生成AIは、対話式のシステムにてユーザーが質問や指示を入力します。AIは質問や指示の内容を解析し、回答をテキストとして出力します。近年のテキスト生成AIは進化しており、質問に対する単純な答えを生成するだけでなく、エラーがあるプログラミングコードを入力した際にエラー箇所を指摘できるレベルになっています。代表的なサービスとして、ChatGPTやGoogle Bard、BingAIなどは有名です。
2つ目は、画像生成です。入力したテキストの内容を元に、イメージに近い独自の画像を生成します。画像生成AIは、デザイン業界での活用が期待されています。Webサイト制作で使用する背景画像を生成AIで作成できれば、作業の効率化が見込めるからです。画像生成AIの代表的なサービスとして、CanvaやStable Diffusionが挙げられます。
3つ目は、動画生成です。画像生成と同様、テキスト入力した内容を元に、オリジナルの動画を生成します。動画生成は生成AIの開発の中でもレベルが高く、長編の動画作成は難しいようです。将来的に技術が進歩すると、長時間の動画生成も可能になり、プロモーションビデオの作成もできるかもしれません。動画生成AIには、RUNWAYがよく使われます。
最後に挙げるのは、音声生成です。文字通り音声を生成するAIで、声を入力するとその音質を高い精度で再現し、テキストの読み上げなどに活用できます。代表的なサービスに、VoicevoxやCoeFontなどがあります。
生成AIの優位性
生成AIは、一瞬のうちに多数のコンテンツを作成できる点が魅力です。それぞれのコンテンツを比較して優れたアイデアを発見したり、発想になかった新しい作品を作ることも可能になります。生成AIは工数削減や生産性・品質向上などにも役立ちます。技術を持っていなくても設計・プログラミング・デザインができるため、技術者やクリエーターの数自体が増加する可能性があります。
生成AIに潜むリスクとは?
有用性が注目される生成AIですが、潜在的なリスクも存在します。リスクが顕在化した例を含めてご紹介します。マーケターの中には、提案や戦略立案など自身の仕事の中で生成AIの使用を検討している方もいることでしょう。リスクを理解し、問題を招かないよう、下記を参考にしてください。
著作権・商標権・意匠権・パブリシティー権などを侵害する恐れがある
AIは学習したデータからコンテンツを生成します。コンテンツ生成に他人が作成した著作物のデータを利用した場合は、著作権侵害となる可能性があります。商標権や意匠権、パブリシティー権も同様で、偶然だとしても、他者の登録商標や意匠と同一あるいは類似のものを商用利用するのはそれぞれの権利の侵害にあたります。各種権利の侵害は世界中で問題になっており、人気アーティストの声を再現し模倣した曲がSNSでアップされたり、許可なく自分の作品をAI学習に使われたとして訴訟を起こす動きも見られます。
機密情報が漏洩する危険性がある
生成AIに個人情報や社外秘情報、機密情報などを入力すると、それらの情報がサービス提供会社に保管され、AI学習に利用されることがあります。有用な回答やコンテンツを得るために生成AIを利用しているつもりでも、情報漏洩につながる可能性が高まるということです。漏洩した情報は、サイバー犯罪に利用される恐れがあります。マーケティング担当者は営業や契約などの重要情報を把握する立場にあるため、生成AIの使用には注意が必要です。
品質に偏りが出る場合がある
生成AIは、まだまだ発展の余地がある技術です。品質を高く保つには大量のデータの学習が不可欠ですが、分野によっては十分なデータがないケースがあります。品質に影響を与えている別の要素は開発環境です。特に画像に関する生成AIは数百万ないし数十億の画像データをセットします。大量のデータを学習させるには十分な演算能力を持つコンピュータインフラが必要ですが、貧弱な開発環境では生成AIの品質を低下させる可能性があります。
クリエーターの収入や働く場が減少する
生成AIを使用すると、イメージに合うコンテンツを瞬時に作ることができます。そのため、クリエーターへの仕事に依頼が減り、収入が減少したり、雇用の機会が失われるケースが出てきています。仕事の単価が抑えられるなどして、モチベーションが維持できなくなり、良質な作品が生み出されなくなる危険もあります。
AIを活用する上でリスクマネジメントを徹底する
生成AIは有用な道具になりえますが、リスクも存在することがわかりました。では、AIの活用する面で企業はどのようなリスクマネジメントを行う必要があるのでしょうか。
ガバナンスやコンプライアンスの枠組みを確立する
企業での生成AIの使用を開始する際は、あらかじめガバナンスやコンプライアンスを確立し、ルール決めしておくと良いでしょう。してはいけないことを明確にしておくと、従業員はより正しい仕方で生成AIを使えるようにはずです。枠組みの中に、無許可での使用を禁止することも盛り込みましょう。管理が行き届かない状態で好き勝手に生成AIを利用すると、容易に著作権侵害や情報漏洩が起きます。禁止事項の制定とともに、アクセスブロックやセキュリティシステムを使うなどして、各従業員の使用状況を監視する必要もあるでしょう。
AIを評価する仕組みを作る
生成AIは、時に誤った情報を提供したり、偏った見方を提示する場合があります。誤った情報をマーケティングなどに利用すると、会社を間違った方向に導きかねません。それでも、生成AIの利用者は何が正しい情報あるいは間違った情報なのか判断するのは難しいと考えられます。入力・出力情報の評価ツールなどを用意し、出力結果を検出して評価する仕組みを作るのが得策です。
今後のAIとの向き合い方
AIは急速な進歩を遂げています。AIの将来像を見据えると、どのように向き合うと良いか見えてくるはずです。
AIの将来
AIはソフトウェアの開発や保守への活用が期待されています。コード生成やバグの修正、メンテナンスに利用し、ソフトウェア開発プロセスが自動化できるでしょう。映像制作やVR、メタバースなどにもAIが使われると予想されています。情報セキュリティの面で、脆弱性を見極めて各人にアドバイスしたり、適切なスクリプトを生成するようになるかもしれません。
AIとの向き合い方
今後のAIは今以上に精度が向上し、有用なツールになっていくはずです。AIの力を最大限利用するためのスキルを身に付けていると、会社への貢献度が増すでしょう。それでも、ヒューマンエラーを起こす人間がAIを作成している以上、完璧なシステムを作ることは難しいと考えられます。法規制に触れたりフェイクコンテンツがますます出現することも考えられるため、セキュリティ面の強化が欠かせません。AIを過信せず、リスクを頭に置きながら利用していく姿勢も大切です。